認知症カフェを知ろう

3.認知症カフェをめぐるいくつかの疑問と誤解

 認知症カフェを理解するためのポイントをQ&Aで考えていきたいと思います。


Q 高齢者サロンなどとの違いはどのようなことですか?

A 各地域にある高齢者サロンなどの集まりとの違いは、対象者と目的が大きく異なります。それによって行われる内容が変わります。認知症は、だれもがなりうる病であり、だれもが介護者になる可能性があるものです。しかも目には見えないものです。だからこそ誰でもが対象で、その寛容さを育む場所であるのです。認知症になると、レクリエーションや歌についていけなくなることがあります。認知症カフェは認知症を意識しないでいることができる場所であることが大切です。もしかすると、皆さんがいったことのある認知症カフェはレクや歌を行うところがあったかもしれません。でも、それは主たる目的ではありません。そこには、専門職がいたはずです。気兼ねなく相談できる場所であり、気兼ねなく過ごすことができ、さりげなく情報を得ることもできる場所と考えてください。
 認知症カフェは、それがあることによって、地域全体を認知症に理解のある街に変えていく力があります。「砂漠の中のオアシス」を作るというよりも、認知症カフェから認知症に理解のある地域に変えていくための「砂漠を緑地化する」活動というイメージが大切ではないでしょうか。


図3 認知症カフェとピアサポートの違い
(地域を変える認知症カフェ~認知症カフェ企画運営マニュアル~中央法規出版2018)


Q 認知症カフェは、認知症の人の居場所づくりなのでしょうか?

A 認知症カフェという言葉は新しく、まだまだ理解浸透がなされていません。なかには「私は認知症ではないから関係ない」といわれる人もいますが、そうした方は認知症カフェ=「認知症の人のカフェ」という認識なのかもしれません。地域の方や専門職なども共に同じ場を共有する認知症カフェは、その本質を考えれば「認知症になっても安心して地域で生活していくためのカフェ」の略語といっていいものです。認知症の明らかな原因としてわかっていることが、加齢の影響であることを考えれば、認知症は私たちすべての人の人生の中の一つです。しかも、認知症は知らず知らずのうちに進行する病です。これらの点から、認知症カフェは、私たちの人生にとって不可欠な場所といってよいでしょう。

写真2 認知症カフェで参加者の家族介護者の相談に乗る専門職(オランダ)


Q 月に一回だけでは足りないのではないでしょうか?

A 認知所カフェを開催していると、毎日開催してほしいという声や、月一回では足りないという声を耳にすることがあります。それだけ認知症カフェが愛されているということなのかもしれませんが、最も大切したいことは、その認知症カフェが継続的に10年も20年先もこの地域で継続することではないでしょうか。現在、認知症カフェの運営はほとんどの方がランティアで活動しています。専門職の方は通常業務の合間や休みの日に参加しますので毎日というのはとても難しいことです。なにより、地域を変えていくことは一朝一夕ではいかず、長い期間で醸成されていくものです。これらから、何より無理をしないで継続をすることが最も大切なことだといえます。


Q 認知症カフェは誰のものなのでしょう?

A 誰のものでもなく、その地域全体の財産といえるでしょう。そのために地域全体で支えていくような体制が必要です。町内会長さんや地区の民生児童院の方など様々な方の協力で運営を支えていくことが大切です。専門職だけのものでも、一法人だけのものではありません。中心となる人一人がやめると終わってしまう、法人の方針が変わればなくなってしまうものでは継続は望めません。皆さんも、運営者や協力者としてぜひかかわってみてはいかがでしょうか。


写真 土曜の音楽カフェ♪の運営メンバー