認知症カフェを知ろう

2.なぜ認知症カフェは必要なのか?

 誰でもどこでも気軽に始められるという気軽さは、それゆえの課題も生じさせています。例えば、「認知症カフェをはじめてみたものの人が集まらない」という課題は最も多く聞かれるものです。この理由は「認知症カフェとは?」という問いに対し、地域の方にうまく伝えきれていないことが大きな理由ではないでしょうか。そこで、認知症カフェが地域に必要な理由を解説したいと思います。

●認知症カフェが必要な理由その1「認知症の入り口問題」
 「認知症になるとは何もわからなくなる」というイメージが認知症の診断や専門職への相談を遅らせてしまいます。認知症になると「忘れたことすら忘れてしまう」と言われていた時代もありました。「認知症になると何もわからなくなるから幸せだ」という誤解を生んでいました。そのような偏った認知症の知識が広く浸透していました。さらに最近では、診断されると、免許の返納を迫られ、一人で外出することも制限され、地域での役割を失い、働いている場合には仕事を失うこともあります。このように認知症と診断されることで失うものがあまりにも多くあります。認知症ということを公表すると周囲から「認知症の●●さん」「かわいそうに」と言われることもあります。これらより認知症と診断されることは、負の烙印を押されるような印象を与えてしまうのかもしれません。本人もこうしたイメージが認知症なのであれば「何もできないわけではない」「まだ大丈夫」と思ってしまうでしょう。入口問題はここにあるのです。認知症カフェは、認知症の人だけの場所ではなく、地域住民がも対象となっている理由の一つには、こうした地域の認知症の疾病感を変容させるとう使命があるからです。

●認知症カフェが必要な理由その2「診断後の空白の期間」
 「空白の期間」とは、日本認知症本人ワーキンググループを立ち上げた藤田和子さんが2014年認知症サミットの後継イベントのスピーチで用いた言葉です。診断直後に、何も支援のない期間を生じるということを表現したものです。認知症の早期診断は進みました。以前と比較しても自ら違和感を覚え病院に受診にくる方が増えているそうです。認知症と早期診断がなされても、日常生活にすぐ大きな支障が起こるわけではありません。身体的介護も必要ありません。必要なことは、社会とのつながりが希薄になり、不安感に苛まれる方への孤立しないための支援です。早期診断は、早期支援とセットでなくては「空白の期間」をつくってしまいます。かつては、その期間は定期的な受診、投薬しかありませんでした。認知症カフェでは、この空白の期間にこれまでの繋がり、あるいは理解者との新たな出会いの場となることを期待しています。認知症の初期で失われそうになる自己効力感や自尊心の低下を防ぐための役割の創出にもなります。介護保険サービスでデイサービスや訪問介護などを利用している人にも空白の期間が存在します。週3日のサービス利用時以外誰にも会わないという人もいます。また、介護サービスを利用し始めた途端、これまでの繋がりが断絶してしまうという人もいます。認知症カフェは、空白の期間を解消するための新たな社会資源として期待されています。

次回は「3.認知症カフェをめぐるいくつかの疑問と誤解」です。