・内服薬は多数服用していて、副作用はあると思う。特に、興奮を鎮めるために内服しているグラマリールは、注意事項に「あせり」が出現することが書かれ、興奮を抑えているが、そのために異なる感情も出現していると考えられる。他の薬剤に関しても「身体のほてり」の副作用があると記載されているものも多く、このような副作用も情緒面の不安定さが現れていることの一因であると考えられる。
・アルツハイマー型認知症も進行している状況である。停滞感はあまりなく、進行している感じを著明に受けている。
家族に薬の影響の可能性について、話をしたことはありますか?
話をしたことはありますが、以前から、かかりつけの病院で薬の処方を受けられており、家族が信頼をされています。眠剤が増えてもいるようですので、処方についてもう少し情報交換をすることが必要かもしれません。
(2)身体的痛み、便秘・不眠・空腹等による苦痛の影響は考えられますか?
・排泄動作や行動をうまく表現できない方なので、排便のコントロールも本人ではできにくいと考えられる。便秘の時には、腹部の不快感や苦痛に関して本人自身に改善できるすべがないので、精神面や行動の不安定さが出てくると考える。
・夜間は、眠前薬を服用中であり、「安眠している。」と家族より話がある。
(3)悲しみ・怒り・寂しさ等の精神的苦痛、また本人の性格等の影響は考えられますか?
・認知症が重度になってから、妻に対する言葉や行動で、怒り口調や手を上げることがある。今までは、比較的穏やかであったとのことであるが、気難しい性格からか上記の行動や言動があると思う。
・本人は、「やりたいこと」をしたい希望が強いが、認知症のためやりたいことをうまく表現できないことが多く、止むを得ずだが職員や他利用者から静止されることもあり、ストレスや怒りはあると思う。
・小学生の施設訪問の際には、笑顔が長く見られる。子供との交流を積極的に図ることは見られないが、言葉をよく発していることは見受けられる。
・他利用者からの視線に関しては、本人はストレスに感じていると思うし、不安感の助長につながっていると思う。
認知症になる前の性格はどのような性格だと聞いていますか?
若いころより、頑固で気難しい一面はあったとのこと、バイクや山登りに一人で行くなど、一人の時間を好んでいた。
(4)音・光・味・臭い・寒暖等感覚的な苦痛を与える刺激の影響は考えられますか?
・音に関しては、敏感に苦痛を感じることが見受けられる。そのために、集団でのレクリエーションなどは落ち着いて参加できずに、精神面での不安感の助長につながっていると考えられる。
・歌のレクリエーションに関しては、参加し始めは落ち着きがないが、少し時間が経つと落ち着きを取り戻して椅子やソファに座って聞いていることもある。参加時の気分で異なるようである。
・光に対しても、自宅に関しては、山間部のため部屋の中は比較的暗いようである。デイサービスは光がよく入り、自宅よりは明るいので、部屋の明るさからの環境の変化は少なからずあると思う。
(5)家族・介護者など周囲からの過剰、あるいは少なすぎる関わりの影響は考えられますか?
・家族は、本人を現状ではしっかりと支えていると考える。長男は、仕事が休みの時には本人と外出して、気分転換や精神活動の活性化を働きかけている。
・また、近隣に住んでいる家族も、自宅へ通う回数が少ないほうではない。妻も、自分の体調に合わせてだが、自宅での介護を精一杯していると考える。
(6)障害程度・能力の発揮に対して、住まい・器具・物品等物的環境による影響は考えられますか?
・本人は、自宅では比較的気に入っている場所があり、そこにはソファがあり外の景色を眺めることができる。このような環境は、デイサービスセンターではフロアが一番適しているのだが、他利用者との共有場所ということもあり、現在のフロアでの環境は、本人に適していないと考える。やはり、一人で落ち着ける場所が必要だと考える。相談室にもソファがあり、外の景色を眺めることができるが、本人は、好んで相談室の場所に行くまでには至っていない。
・本人の不安感が増すようなフロア空間であるように感じる。もっと、広い空間を望んでいると思う。
(7)要望・障害程度・能力の発揮と、アクティビティー(活動)とのズレによる影響は考えられますか?
・本人は、集団でのレクリエーション活動に関しては、他利用者との会話やレクリエーションを通じての対人関係の交流を図ることが円滑にできない。風船バレーであっても、他利用者は楽しめるけれど、本人に関しては、その場の雰囲気で楽しいものであることは理解しているものの、行動や言動での表現が難しく、本人が楽しんで参加することはなかなかない。
・外出活動に関しては、家庭でも頻繁にしているということである。デイサービスでの外出企画の時には、ほぼ毎回希望をしているので参加してもらっている。笑顔を見せるなど、表情はとてもいい。
・本人の趣味である庭の手入れを活かす一環としての盆栽などの手入れは、興味が引き出せず、手に取ることもない。
・歌のレクリエーションでは、落ち着けることもある。
(8)生活歴・価値観等に基づいた暮らし方と、現状とのズレによる影響は考えられますか?
・生活歴の中では、鉄道の機関士(運転手)をしていたとのことで、几帳面な性格である。対人関係では、利用初回時から他利用者との距離を少し置いていた感じもした。一人でソファに座っていることが多かった。
・趣味で一人でのバイクツーリングに行っていたことを考えると、他利用者との交流はあまり好んでいないと思う。認知症も重度であり、他利用者との交流も図りづらい状況である。多くの利用者が他者との交流を楽しんでいる状況からすると、本人に適したデイサービスの利用に、なかなか結びついていないようである。
・今まで一人でのバイクツーリングなどをしていたので、温泉施設や公共の場では、きちんとした挨拶などの応対はしっかりしている。こうした外出などの新しい環境の変化には、本人は柔軟に対応できていると考える。