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事例概要 事例19

タイトル:「眠れない」が口ぐせのAさん

Ⅰ.<事例の状況>

 「通帳がないよ。○○が持っているっていう書付があるから、電話貸して。」怒った表情で、周囲が寝静まった頃にAさんが言ってきた。一緒にお茶飲みすると落ち着いて「おやすみなさい。」と自分からベッドへ戻った30分後に、再び泣き顔で出てきた。「もう死にたいよ。どうして誰も教えてくれないのよ。通帳を持って行ったことを・・・。」とっさに震えているAさんを抱きしめた。どう対応したらよいか、慰めの言葉も思いつかず、私がAさんだったら泣くだけ泣けばサッパリすると思った。もう一度お茶をすすめてから、二人でAさんのベッドに入った。背中からAさんの嗚咽とぬくもりが伝わり、静かな眠りに入っていった。

Ⅱ.<この事例で課題と感じている点>

 自分の願いを言葉で適切に表現できるので、眠れない不安にどのように対応するか。
 女性でも一人で仕事をもって活躍しながら子育てをしてきた。家族間の役割と立場が以前とは異なった状況になってきたことをAさんが理解できていない。

Ⅲ.<キーワード>

 通帳がない。 誰も教えてくれない。 センター方式B1私の家族シート。 どう対応したらいいのか。 ぬくもり。

Ⅳ.<事例概要>

年  齢 80歳代後半
性  別 女性
職  歴 工場勤務 調理手伝い 仲居 飲食店経営
家族構成 入居前は一人暮らし
認知機能 NMスケール66点
要介護状態区分 要介護3
認知症高齢者の日常生活自立度 Ⅱb
既 往 歴 糖尿病 高血圧症
現   病 腰痛症 狭心症 便秘症 アルツハイマー型認知症
服 用 薬 アリセプト・ハーフジゴキシンKY錠・ニトロールRカプセル・ビオフェルミン・酸化マグネシウム・モーラス
コミュニケーション能力 好きな話題は自分から言葉で上手に伝えることができる。笑顔が多く、その場の雰囲気に合わせて言葉を選んで会話できる。
性格・気質 人が好きで、寂しがり屋の面もある。先妻の子供を育てたが、現在は「その子供の世話にならずに自分で何でもやりたい。」と言うのが口癖。
A D L 排泄はパッドを使用するが基本的には自立。 移動、食事は自立。 入浴は見守り。
障害老人自立度 J2
生きがい・趣味 料理 歌うこと
生 活 歴 A県生まれ。B県の料亭に働く姉を頼って、見習いに入る。戦後、女の子が2人いる男性の後妻に入り、娘たちが成長し結婚する。昭和50年代頃から夫の退職金で駅前に飲食店を開き、自分は店の2階に住んで仕入れから料理を担当し、従業員が2~3名の店を切り盛りする。夫は先立つが、店が大事と張り切っていた。飲食店を閉店しても、店の2階に一人暮らし。5年程前、服薬を忘れたり食事をとらないことから娘が受診をすすめて、認知症の診断を受けた。その1年後、一人暮らしの限界と娘が判断して、グループホーム入居となった。
人間関係 自分の話を聞いてくれる人がいると朗らかに過去の体験を楽しそうに話すのが好き。弱い人や助けを求められる場面に出会うと、一生懸命手助けをして、喜んでもらうのが好き。ひとりぼっちになるとお金の心配をして塞ぎこんだり涙ぐむことがある。
本人の意向 誕生日に欲しいものを聞かれると「かっこいい男」と答える面もあるが、答えながら、それが冗談と分かる常識がある。子供には迷惑を掛けたくない思いで、自分自身のこともお金のことも、すべて自分で解決したいと常に心配している。
事例の発生場所 グループホーム
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