既往症:糖尿病、高血圧症
現 病:腰痛症、狭心症、便秘症、アルツハイマー型認知症
服 薬:アリセプト、ハーフジゴキシンKY錠、ニトロールRカプセル、ビオフェルミン、酸化マグネシウム、モーラス
アリセプトはいつから服用していますか。薬の効果や副作用はありますか。
7年程前から、副作用はないと思う。
酸化マグネシウムは、いつ服用していますか。排便の周期と便の状態はどうですか。3日以上排便がない場合はどうしていますか。
朝食後服用。ほとんど毎朝排便あり。
糖尿病はどのような状態ですか。(数値や配慮していることなど)
血液検査では異常なし。
(2)身体的痛み、便秘・不眠・空腹等による苦痛の影響は考えられますか?
・腰痛による前屈、特に左側の痛みによるアンバランスな歩き方。
・便秘による左わき腹を押さえながらの歩行。
腰痛や便秘については服薬以外に何か工夫していることがありますか。
下肢の保温、体を動かすこと、朝食後のヨーグルト、果物、水分摂取のすすめなど。
常に痛むという左わき腹のことですが。このことについて医師や看護師に相談してみたことがありますか。
ホーム長(看護師)には相談しているが、私は本人のしぐさの癖かな?とも思う。
腰痛やわき腹の痛みは、身体的なものだけではなく心理面も作用していると感じますか。他に要因がありますか。
時々、言いにくいことを訴える時、注目を浴びる意味で、「格好をつけているのでは?」と思う。それにしては背中が曲がってきているので、バランスをとるために丁度よいポーズとも思う。
(3)悲しみ・怒り・寂しさ等の精神的苦痛、また本人の性格等の影響は考えられますか?
日頃は強い意志の表現として毅然とした姿勢を保ち、「私はみんなと違う」少し優越感を保って、凛とした態度を見せることが多い。
特に「私はみんなと違う」と毅然とした態度をとる時は、どのような場面ですか。本人が得意なことや自分の存在を認めてほしいという心理状況を感じますか。
まったくそのように感じている。大半は反対意見であったり周囲がはっきりしない表情の時、「私だけは・・・」という調子。食べ物にしても「キムチが食べたい」とか、「お酒は焼酎の水割り」とか。意味深いことを発言するわけではないのに、具体的な言葉で本人のこだわりを明確に表現している。
(4)音・光・味・臭い・寒暖等感覚的な苦痛を与える刺激の影響は考えられますか?
これまでの仕事柄、味には少々うるさい。→調理をしてもらう。
味見については具体的にどのような役割を果たしていますか。周りの人との関わりはどうですか。
本人に「お願い」と頼んで、味付けを好きなようにやってもらったり、少量を取って味を見てもらったりする。味を見てもらうと一瞬考える表情を見せて、すぐに決断した返事が返ってくる。
眠る時の光の状態は大きな影響があるように感じますが、安心して眠れるための環境は確保されていますか。
若い頃から真っ暗な時に寝入っていた為、暗くないと眠れない。居室カーテンは窓全面の裏付で、光を通さない。確保できている。夜間の少量の失禁により、人より寒がる傾向。
少量の失禁に対して具体的にどのような支援が行われていますか。
布パンツにパッドをあてている。本人が自分でとりかえてゴミ箱に入れられるように配慮している。
(5)家族・介護者など周囲からの過剰、あるいは少なすぎる関わりの影響は考えられますか?
常に一歩前、一歩上といった態度で生きてきた。
上昇志向は現在の生活でどのように活かされていますか。それに対するスタッフや他入居者家族などの評価はどのような形でなされていますか。その評価は本人にとって満足できていますか。
頼られると力を発揮するタイプ。自分から弱音を吐けないので、その時は塞ぎこんでうつ傾向になってしまうタイプ。どんなに遅く起きてきても姿勢を正してみんなに聞こえるように大きな声で自分から「おはようございます。」と言う。調理担当の職員が手間取ったり、家族差し入れの大きなお魚が届いてとまどっても、「どきな、やってやる。」と腕まくりで力を発揮し、それを言葉にすることなく、周囲が「おいしいね。」と言った時、目で合図を職員に送ってくる。
(6)障害程度・能力の発揮に対して、住まい・器具・物品等物的環境による影響は考えられますか?
・在宅時に自分の部屋にあったものはグループホームに置いてある。ここが自分の家であり、部屋。
・家具そのものはグループホームに前からあった家具を貸している。但し、夫の位牌や手鏡、テレビなど自分の品々に囲まれている。
今までの生活を大切にしていることが窺われますが、部屋での過ごし方では何をどのように活かしていると感じますか。夫の位牌や手鏡など日々のセレモニーとして自主的な行動として行っていることを具体的に教えてください。
朝は夫の写真にお茶をあげる。朝食後に化粧水をつけて、外出前に薄化粧して眉を描く。夜は在宅ではコールドクリームでマッサージをしていたそうだが、今はしていない。
(7)要望・障害程度・能力の発揮と、アクティビティー(活動)とのズレによる影響は考えられますか?
グループホームでの役割は台所の仕事。献立を決めるのにも役割を果たしてもらっている。
決まった台所の仕事や献立を決める場合の役割はありますか。自主性と満足度について教えてください。
特に決めていない。台所に関しては、食べるものの話、買い物、調理、盛り付け、配膳、片付けなどすべてにわたって本人は気分が向けばやってくれる。そのときに夢中になっていることがなければ声をかけたり、寄って来た時、手伝ってほしい時に姿を探してお願いする。時には「自分だってできるのに・・・。」と言いながら手伝ってくれる。食べ始めて、思わず「おいしいね。誰が作ったの?」という声が上がると、本人はおそらく作ったことを忘れているが職員が「もちろん。」というので本人は嬉しそうな表情を見せる。
好きな歌やよく話をすることは何ですか。特に自分が頑張ってきたこととして強調することは何ですか。それに対して周りの反応や関わり、本人の満足度はいかがですか。
歌を歌うこともお話も好き。どんなに自分が頑張ってきたか、「えらいでしょう」と思わせる話しぶり。好きな歌は「美空ひばり」「民謡」など。よく話に出るのは飲食店をやっていたときのこと。がんばってきたのは結婚前にB県の料亭で修行していたときに、皿洗いから始まり、料理を覚えた頃のこと。まわりの人も聞きながら「大変だったね。」と相槌をうち、自分も苦労してきたことを話し始める。
経済の不安が大きいように感じますが、お金のことや銀行通帳のことで配慮していることがありますか。
加齢とともに心寂しくなった経済状況で、毎晩のように銀行通帳を気にするようになった。生まれも時代も裕福な時ではなかったので、なつかしい話をすればお金に余裕がなかった。周囲の入居者も自慢するわけではなく、みんなが貧乏話になってしまう。現在、みんながある程度の暮らしができるようになっているので、職員にとっては「ふーん」と興味深く教えてもらう話になってしまう。「お金は要るんならホーム長に言ったら・・・」と伝えると、「そうだね。」と本人は言うがホーム長の姿を見つける頃には忘れている。
(8)生活歴・価値観等に基づいた暮らし方と、現状とのズレによる影響は考えられますか?
本人にとって思い出はどれも大切。中でも一番は駅前に飲食店を経営していた時の自分。そのAさんをクローズアップする。歳をとった現在はもう少しのんびりと生活してもよいのでは・・・?
本人とスタッフの想いが違うように感じますが、本人はどうしたいのか話し合ったことはありますか。本人はどのように話していますか。本人の言葉や言動を具体的に教えてください。「もう少しのんびりと・・」と思った理由は何でしょうか。
グループホームで着るものにはお金を使わないが、外出するというと持っている洋服の中の派手目のものを自分で選んでくる。寝たきりの他の利用者の介助等を手伝ってくれるが、同時に「自分だけは・・・」という思いなのか、「ああいうのを見ると落ち込む。」とも言う。本人なりに歳をとるということをどこかで折り合いがつけられれば、もっと楽になるのではと思った。