今の段階では考えにくい。
下剤の調整で、痛みの訴え自体は減りつつある状態である。
(2)身体的痛み、便秘・不眠・空腹等による苦痛の影響は考えられますか?
考えられる。
度合いはともかく、何らかの腹部違和感があると思われる(便秘・尿意・腸の蠕動運動)。
(3)悲しみ・怒り・寂しさ等の精神的苦痛、また本人の性格等の影響は考えられますか?
大いに考えられる。
「息子や娘がいるのに、何でこんなところに私を置いてんだか…」とたびたび話す。
寂しさにつき合えるスタッフはいますか?また、かかわりの時間に対する配慮はどのようにしていますか?
「寂しさにつき合う」というよりは、紛らわすようにしていたかもしれない。子どもたちを皆「上の学校」まで行かせたことが自慢なので、その話で気分を盛り上げる方法を取っていた。それすら、どのスタッフでも可能というわけではない。
かかわりは、本人の気持ちのいいときは濃く、混乱の強いときは(それ以上の混乱を防ぐため)淡々とかかわることを原則としている。
(4)音・光・味・臭い・寒暖等感覚的な苦痛を与える刺激の影響は考えられますか?
考えられる。
感覚器官の機能低下が著しく、逆に感覚刺激が少ないという意味で影響をもたらしている可能性がある。
このことについて、医師と話し合ったとき、どのような診断を受けましたか?
視神経そのものの機能が衰えているので、今以上の視力は望めない。聴力についても、補聴器を使っても聴力には限界があると言われたとのこと。何度も補聴器を替えたが取り扱いが困難ということだった。
(5)家族・介護者など周囲からの過剰、あるいは少なすぎる関わりの影響は考えられますか?
考えられる。
本人はトイレ以外に居室を出ることはなく、その割には家族・介護者の訪室は少ない。1回のかかわりは多すぎる(本人の生活のリズムに合っていない)可能性がある。
これらの影響に対して、どのような工夫が考えられますか?
居間に比べて静かで人の出入りの少ない多目的室での交流。おやつや食事の前後、調子の良い日は、そこで、談話を楽しむことができる。
家族への手紙を綴ることを日課にする。
(6)障害程度・能力の発揮に対して、住まい・器具・物品等物的環境による影響は考えられますか?
今の状態では考えにくい。
ADLはホームに入ってから向上している。
ADL向上につながっていると考えられることは、具体的にどのようなことですか?
入居時は一人で歩けなかった。這ってトイレに行っていたが、歩行介助の結果どんどん歩けるようになり、手すりにつかまって歩けるようになった。トイレでの立ち上がりも見守りだけでできるようになった。
(7)要望・障害程度・能力の発揮と、アクティビティー(活動)とのズレによる影響は考えられますか?
考えられる。
入居当時は、皿洗い・団子作りなど盛んに台所仕事に参加していたが、一緒に行える入居者がいなくなり、徐々に体力・気力が低下していった。
「一緒に行える入居者がいない」現状でも、本人が参加しやすい工夫は考えられますか?
本人の教えたい気持ちに乗って、若いスタッフが危なげな手つきで行えば、本人の意欲を引き出せるかもしれない。
(8)生活歴・価値観等に基づいた暮らし方と、現状とのズレによる影響は考えられますか?
考えられる。
「大きな家だったのに」とたびたび嘆いている。
「家の中心で仕切ってきた母」と家族が話している。
これらの影響を考慮した上で、本人に接するときにどのようなかかわりが大切だと思いますか?
年長者であることを敬い、本人の経験を尊ぶ態度が大切と考える。かといって、何でも言うとおりにするとスタッフが召使いになってしまうので、その辺りが難しいと感じている。
本人が、鷹揚でゆったりした「おかみさん」の態度でいられるように、距離を取りながら、改まった態度でのぞむと良いのではないかと思う。