「海外認知症ケア情報」
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海外認知症ケア情報のねらい

海外調査は、各国の理念に基づいて体系化されつつある認知症関連研究、およびケアの実践等を、文献、関連資料、ヒアリング等の調査を通じて集約し、先駆者等の最新の取組みや海外認知症ケアの動向の把握を目的としています。あわせて、各国の制度、支援体制システム、ケアのフレーム等を調査し、背景や現状、課題を整理しつつ、海外認知症ケアの基本情報を集約します。

(注)掲載資料は平成23年3月末日時点のものです。

海外認知症ケア研究・関連情報

スウェーデン

スウェーデンやデンマークなどの北欧諸国は、日本での高齢者ケアの議論において必ずといってよいほど引用されることが多いといえます。「高齢者ケア」はスウェーデンの国民にとっても、大きな関心を持っている分野の一つで、政党によっては政治的方向性も異なることがあります。これまでにも、高齢者ケアの様々な問題が議論されてきました。日本とスウェーデンでは歴史的、政治的背景などが異なりますが、スウェーデンが日本より早く高齢化を迎え、種々の問題を先に経験してきたという意味では参考になる点も少なくないのではないでしょうか。日本とスウェーデンの違いはいくつかありますが、その1つは、ケアの保障において行政が果たしている役割です。これは認知症ケアについても同様で、報告書で紹介する「より良い認知症ケア」においても行政の果たす役割が強調されています。認知症ケアの最新情報をご覧ください。

オーストラリア

オーストラリアの福祉政策は、「中負担・中福祉」を基本方針とし、わが国とポジションが近いと考えられます。但し、財源は税金による一般財源と利用料で賄い、社会保険方式をとるわが国とは異なります。また、ミーンズテスト(所得・資産テスト)に基づく利用料金設定や受給制限がなされています。
認知症ケアは、「コミュニティケア(在宅ケア)」が基本モデルとなっており、①認知症専用在宅ケアパッケージを開発、②レスパイトサービスや、認知症ヘルプラインなど、手厚い家族(介護者)向けサービス、③国家主導による「認知症国家戦略」「緩和ケアガイドライン」等の策定、④若年性認知症患者、移民、英語を母国語としない人など、少数派のグループへの配慮、⑤認知症介護を支えるボランティア活動、⑥ITの積極的な活用、などの特徴が見られます。わが国の今後の認知症ケアを拡充していく上で、財源面においても、施策の方向性においても、非常に示唆するところが多いといえます。

デンマーク

デンマークの認知症介護システムは、国民一人ひとりが登録しているかかりつけ医、専門医療、専門ケアサービスなどを、途切れることなくつなげていきます。早期診断のしくみや、行動障害などによる困難が生じてきた場合にも、1人の高齢者をチームで支える完成度の高い支援システムが作られてきました。高齢者の必要に応じて、柔軟に、迅速に支援するしくみは、人口僅か550万人の小さな国だからこそできたことかもしれませんが、認知症ケアの専門教育、医療連携、認知症コーディネーター制度などの取り組みは、認知症になってもその人らしく、住み慣れた地域で支え続けるという、今、まさに日本が目指していることを具現化した取り組みといえます。

イギリス

1979年のサッチャー政権以後、イギリスでは公的部門の民営化と社会保障費の削減により、かつての世界に最たる福祉国家としての面影は、全国民が無償で受けられる医療制度や施設ケア等の一部に残す程度となりました。その後、ブレア政権時代になると、経済回復と共にイギリスの福祉政策は、再度、大きく舵を切りなおし、ケアの質への取り組みなどが始まっています。
認知症高齢者対策としては、2009年2月に「認知症国家戦略」が策定され、認知症ケア先進国を目指した本格的な取り組みが始まっています。国家をあげてとりまとめた本国家戦略は、明確な目標と具体的な実施方法まで示しており、大変興味深い内容となっています。イギリスでは、高齢者ケアにおける認知症ケアとの峻別はそれほど進んでいなかったのがこれまでの実態でしたが、アセスメントの流れ、レスパイトサービスや、認知症ヘルプライン、ダイレクト・ペイメントを初めとした家族(介護者)向けサービスなどについては、わが国の今後の認知症ケアを拡充していく上で示唆するところが多いといえます。
認知症ケアは社会保障制度の中の一部です。イギリスの認知症ケアを理解するためにも、前提となっている、国全体の社会保障制度(ミーンズテストを通じたサービス利用料体系や年金制度、税金による医療制度等)の状況を踏まえておくことが重要であり、以下ではイギリスの高齢者を巡る生活状況や社会保障制度についても解説を行っています。

アメリカ

アメリカでは、認知症介護の現場においても個人の意思が尊重されています。介護を必要とする人は、自分自身の意思で介護サービスや医療保険を取捨選択し、政府は、それに関わる必要経費(保険費や医療費など)に対する税金の控除や優遇といった政策により、認知症患者やその家族を支援しています。また、政府だけでなくNPOなどが積極的に認知症介護にかかわる情報を提供しており、当事者は介護サービスに関する知識を持ち、意識を高めることで、自分にあった介護サービスを自分で見つけ、自分でアレンジできるように支援をしています。
医療や福祉の分野で他の先進国とは一線を画しているアメリカですが、様々な民族が集まって成り立っている国だからこそ、個人を尊重し、また個人のニーズに合った介護が提供するための様々な工夫がなされています。個々の価値観が多様化している日本においても、アメリカの制度から学ぶことは多いと言えます。

ドイツ

ドイツの社会保障制度は日本の制度に似ているものが多く、特に日本の介護保険制度はドイツの制度がモデルとなっていることはよく知られています。しかし、財源や支給対象者の基準、支給内容など、異なる点も多々あります。ドイツの制度は、概して給付が手厚く、社会連帯が重視されていますが、半面持続可能性が問われており、近年自己責任の要素が強まってきています。
ドイツと日本は、経済力や高齢化率など似ている部分が多く、それ故ドイツの認知症ケアの動向を学ぶことは、日本の置かれている現状や、今後の社会保障制度を考える上で非常に参考になる点が多いと言えるでしょう。