・アルツハイマー型認知症。
・老人性うつの病歴。
・排便困難による下剤の服用。
具体的に考えられる影響とは、どのようなことですか?
自分が何をしていいのか分からなくなる不安。自分が何もできないと自己卑下し、他者が悪口を言っていると思い込む。腹部の不快感から気持ちが不快になっているが、なぜ不快なのか自分で分からず混乱してしまう。
(2)身体的痛み、便秘・不眠・空腹等による苦痛の影響は考えられますか?
・便秘があり、下剤を定期的に服用しているが、トイレの場所が分からず探しているうちに混乱してしまう。
・歩き回るので、脱水が心配される。
・膝や腰の痛みがあり、不安や戸惑いや怒りといったふうに気持ちに影響があると考えられる。
(3)悲しみ・怒り・寂しさ等の精神的苦痛、また本人の性格等の影響は考えられますか?
・夫、息子はすでに他界している。
・息子の他界がきっかけで前の施設(養護老人ホーム)へ入居となった。
・徐々にできないことが増えていくことが自分でもなんとなく分かっていて、喪失感がある。
・自宅から施設(前に入居の養護老人ホーム)、そこから当施設へと、症状により周囲の判断で移ってきた。かなり混乱している。
・入居当時、誰も信用できない気持ちがあり、孤立していた。
喪失感に対して、どのような対応を心掛けていますか?
まだできる手仕事を一緒に行い、できないことよりもできることに目を向ける配慮をしている。
(4)音・光・味・臭い・寒暖等感覚的な苦痛を与える刺激の影響は考えられますか?
・排泄介助や食事の準備を始めるときの職員の慌ただしい雰囲気。
・徘徊して、いつもの職員やお年寄りではない人たちや見慣れないものばかりの場所に行くことでの疎外感。
慌ただしくならない方法は考えられますか?
大きな音を出さない。大きな声を出さない。走り回らない。
(5)家族・介護者など周囲からの過剰、あるいは少なすぎる関わりの影響は考えられますか?
・2人の娘は県内に住んでいるが、車で1時間以上かかる遠方である。それぞれが月に2回以上、定期的に家族を伴って交代で面会に訪れる。
・シルバーカーを使用しての歩行状態に多少不安定さがあり、転倒リスクがあるため職員が再三声掛けをしている。
・じっくり話を聞きたいが、他の方に気をとられたりして、じっくりかかわることがなかなかできない。
具体的に、どのような声掛けをしていますか?
「少し足を休めてください。」と休憩を勧めている。
かかわるための工夫として、どのようなことが考えられますか?
記録物を記入する際など、Aさんの側で記入したり、一緒に休憩をしたりしている。
(6)障害程度・能力の発揮に対して、住まい・器具・物品等物的環境による影響は考えられますか?
できることや分かることが徐々に少なくなってきて、家事活動などで能力を発揮する機会が少なくなってきた。
(7)要望・障害程度・能力の発揮と、アクティビティー(活動)とのズレによる影響は考えられますか?
・歌が好き。催し物を見学するのは好き。
・判断力、理解力の低下が見られ、新しいことや複雑なことには抵抗感がある。
・物忘れがあることには本人も気づいているが、解決する方法が分からない。
・家族のために働きたいが、施設では他人のために働くことになり、不本意な気持ちが時々ある。
Aさんの抱える不安に対して、どのようにかかわっていますか?
Aさんの行動や言葉から判断し、さりげなくかかわっている。
不本意な気持ちとは、どのような気持ちなのでしょうか?また、Aさんが家族のためにできていることは何でしょうか?
「娘たちにご飯を食べさせないといけない」と、大変心配している。ユニットでAさんが中心になって作った食事を、家族と一緒に食べた。家族の位牌を毎日拝んでいる。
(8)生活歴・価値観等に基づいた暮らし方と、現状とのズレによる影響は考えられますか?
・農業と、家事を取り仕切っていた専業主婦。
・幼少期から苦労を重ねてきた。つらいことが多かった。
・身内の死を何度か経験したが、息子の死を乗り越えることができていない。
・自分の想う家族(夫が健在で子供を育てているころ)と暮らすことができない。
・身内と離れて暮らしている。施設で生活している。
悲しみに対して、どのように寄り添っていますか?
悲しみを思い出させるのではなく、楽しかった、幸せだった思い出を話してもらい、幸せだったころの幸福感を感じられるよう配慮している。