「事例を探す」

事例概要 事例61

タイトル:気持ちの上での居場所がないイライラ

Ⅰ.<事例の状況>

 Aさんはアルツハイマー型認知症の進行に伴う周辺症状の悪化からうつ症状を発症し、自分のことを他者が非難すると思い込み攻撃的になり、暴言・暴力・徘徊行為が日に何度も毎日のようにあった。
 不安定時いつも口にする言葉は「私は何もできないつまらない人間です。」「私が邪魔なのはよく分かっています。いつ(今すぐ)死んでもいい。」「みんなが陰でこそこそ私のことを笑っている。」そして「帰ります。」と言って席を立ち徘徊を繰り返していた。
 職員に対しても不信感があり、「誰も私の気持ちは分からない。」「心から思ってないくせに放っておいて。」と全てのことに対し拒否・拒絶が見られるAさんへの対応に戸惑っていた。

Ⅱ.<この事例で課題と感じている点>

周囲の人に対する不信感があり、人間関係の構築がむずかしい。自分に自信が持てない。

Ⅲ.<キーワード>

不信感。 被害妄想。 何も分からない。 何もできない。 家に帰りたい。

Ⅳ.<事例概要>

年  齢 90歳代前半
性  別 女性
職  歴 専業主婦
家族構成 別居の娘2人。 夫・息子は他界している。
認知機能 HDS-R 5点
要介護状態区分 要介護3
認知症高齢者の日常生活自立度 Ⅲb
既 往 歴 老人性うつ病
現   病 アルツハイマー型認知症
服 用 薬 ツムラ抑肝散エキス顆粒
コミュニケーション能力 他者を気遣い会話ができる。意思疎通が図れる。
性格・気質 社交的。世話好き。遠慮がち。
A D L 一部介助
障害老人自立度 A2
生きがい・趣味 日常の手仕事。人とのおしゃべり。散歩。
生 活 歴 幼少時に母親を亡くし、父親に育てられる。ずっと農業を行ってきており、結婚後も専業主婦として家計を切り盛りしてきた。15年程前に夫を亡くし、以後、息子と二人暮らしをしていたが、同居の息子が死去し、8年程前に養護老人ホームに入居することとなる。3年半施設生活を続けていたが、4年程前にアルツハイマー型認知症と診断され、認知症の行動・心理症状も増えたことで、それまで入居していた養護老人ホームを退所し、娘が協力して在宅生活に戻った。養護老人ホームへ入居中まわりの元気なお年寄りの中で徐々にできなくなっていく自分の行動を理解されない苦しみ、孤独感から自信を失っていったことが考えられ、同時期うつ症状を発症。暴言、暴力、徘徊行動が見られ周辺症状が悪化していったことが考えられた。専門医を受診しアルツハイマー型認知症であると診断されショートステイを経て特別養護老人ホームへ入居に至った。
人間関係 キーパーソンである2人の娘はそれぞれの家族を伴い定期的に面会に訪れている。本人も来訪を楽しみにしており、期間が長く空いたりふとしたことで顔が見たくなったと思うときは「娘が迎えにくるから帰らないと。」とシルバーカーを押し、納得がいくまで歩くことがある。毎日穏やかというわけでもなく、面会時、娘にもやり場のない気持ちを爆発させることがあり、Aさんが面会時穏やかなときは「こんな日は私も心が和みます。いつも穏やかに過ごしてほしいものです。」と娘が話すこともあった。ほかに、時々ショートステイ利用者の昔なじみの方や、同ユニットのなじみの方と交流することで落ち着いた生活が送れている。
人の役に立つことが好きで、世話好きな反面、自分が自信のない作業や初めて行う作業には戸惑いや不安が大きくなり落ち着かなくなることもある。また、他者に対して世話を焼き過ぎトラブルに発展することもある。
本人の意向 「帰ろうと思っています。」
事例の発生場所 特別養護老人ホーム
前のページへ戻る
ワークシートへ