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事例ワークシート 事例39

A 課題の整理Ⅰ 援助者が感じている課題

① 事例にあげた課題に対して、あなた自身が困っていること、負担に感じていること等を具体的にみていきましょう。

他の人の部屋に勝手に入っていく。

ひもとき?
他の人の部屋に入っていくのはどんな時ですか?他の人の部屋に入っている際に、職員はどのような対応をしていますか?関わりのエピソードを教えてください。
援助者の視点

見当識障害により場所が分からず入っていき、本人には説明謝罪を行っており、納得している。

何度も同じことを話し、説明しても納得しない。

ひもとき?
どのようなやり取りですか?具体的な状況や話の内容を教えてください。
援助者の視点

入浴の際に衣類をタンスから出す際、盗まれたとの訴えがある。

ひもとき?
納得しない状況の中には、Aさんのどのような思いが想像できますか?
援助者の視点

納得しないのは、常に声が聞こえているため。

B 課題の整理 Ⅱ 援助者が想定する対応・方針

② あなたは、この方に「どんな姿」や「状態」になって欲しいのですか。

・泥棒と呼ばないで欲しい。
・大声で叫ばないで欲しい。
・物盗られ妄想を解消して欲しい。

③ そのために、当面どんな取り組みをしたいと考えていますか(考えましたか)。

・専門医を受診し内服の調整。
・洗濯物等は個別対応していく。

ひもとき?
アルツハイマー型認知症と診断されたのはいつごろですか?その際の情報はありますか?
援助者の視点

3年程前に診断されている。情報は、情報提供書に記載されている。

ひもとき?
Aさんの支援に関して、統一している支援目標とサービス内容がありますか?
現在の支援内容で、個別に関わる時間や対応がなされていることはどんなことですか?
援助者の視点

安定した気持ちで過ごすことが出来るように、他の利用者の方達と友好を深めていけるように関わりを持っている。不安や混乱が見られた際には、Aさんの話を傾聴し、不安が解消できるように関わりを持っている。

C 本人の状態や状況を事実に基づいて確認してみよう

④ 困っている場面で、本人が口にする言葉、表情やしぐさ等を含めた行動や様子等を事実に基づいてみていきましょう。

・「Bという男に家の掛け軸を盗られた。○○が殺せ殺せと言っている。」と何度も話す。
・「着替えが2、30枚盗られた。もうここにはいられない。明日息子に電話して迎えに来てもらう。」と何度も話す。
・「年金を盗られた。」と話し、落ち着かないことがある。

ひもとき?
あなたは、様々な場面での「とられた」の言葉にはどのような意味が含まれていると考えていますか?
援助者の視点

盗られた、奪われたとAさんは捉えている。

D 課題の背景や原因等の整理

⑤ 本人にとっての行動や言葉の意味を理解するために、思考展開シートを使って、課題の背景や原因を考えてみましょう。

思考展開シート

・Aさんの居室に掛け軸がない。
・部屋に誰でも入ることが出来る環境。

E 事例に書いた課題を本人の視点に置き換えて考えてみよう

ここで、この事例を本人の立場から、もう一度考えてみましょう。

⑥ 本人の言葉や様子から、本人が困って(悩んで)いること、求めていることは、どんなことだと思いますか?

・部屋に誰も入らないで欲しい。
・物が無くなってしまうことについての不安。
・掛け軸が手元に無いことへの不安。

ひもとき?
あなたは、Aさんにとって掛け軸はどのような意味があると考えていますか?
援助者の視点

Aさんにとっては、命の次に大切、宝物だと思っている。

ひもとき?
Aさんにとって、どのような環境が落ち着ける環境だと考えますか?
援助者の視点

幻聴が聞こえなく、穏やかに暮らせる環境が必要だと思う。

F 課題解決に向けた 新たなアイディア

⑦ あなたが、このワークシートを通じて思いついたケアプランなど、新しいアイディアを考えてみましょう。

・掛け軸を家族に持ってきてもらう。
・居室に徘徊のため出入りする利用者を、観察・巡回を強化して防ぐ。

ひもとき?
掛け軸を持ってきてもらうことでどのような姿を想像していますか?他の環境(職員を含める)が影響していることはないでしょうか?
援助者の視点

掛け軸を持ってくることにより、更に不安や混乱が強く見られる可能性が高いと考えられる。

ひもときアドバイス

 「他人が部屋に入ってくる」「物が盗まれる」「ここは安心していられない」という言葉から、Aさんにとっての不安、周りの方への不信感がつのり、安心できない環境で過ごすことのストレスが大きいことが解ります。また、長年続いている幻聴により、Aさんはとてもつらい思いをしているのだと思います。
 部屋に誰も入らないでほしい、物が無くなってしまうことへの不安、掛け軸が手元に無いことへの不安などに対して、Aさんが落ち着いて暮らせる環境を作ってあげることが大切だと考えます。また、幻聴や妄想についてや、症状に対する専門的診断を受けるために、専門医に相談することも必要ではないかと考えます。今行われている関わりや他の利用者との友好を深めつつ、人としての信頼関係を大切にしながら、あきらめずにチームケアを継続してください。

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