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事例概要 事例30

タイトル:いつも家族の心配をし、繰り返したずねるAさん

Ⅰ.<事例の状況>

 Aさんは、「お父さんはどこに行ったか知らないかね。」「○子はまだ帰らないけど知っているかね。」「私はいつ帰れるのか知らないか。」と一日に何度となく繰り返し職員にたずねる。職員は「仕事に行っていますよ。」とか「お父さんは病院にいますよ。」と不安を解消しようと優しく声をかけるのだが、一旦は納得したり、安心したりしてもすぐ忘れてしまい同じ質問を繰り返す。夫は2年程前に死亡しているが本人はわかっていない。職員はAさん一人だけを対応できないので話を聞いてあげられないと、他の利用者に同じことを何度も繰り返して言ってしまい、時々利用者同士の言い争いになったり、仲間はずれになったりして、不安が増大し職員の後ばかりついて歩いてしまう。

Ⅱ.<この事例で課題と感じている点>

 繰り返される同じ質問に職員がどう答えて良いのかわからない。対応の仕方によっては不安が増大してしまう。他の利用者から馬鹿にされてしまい、仲間はずれになったり、言葉の暴力を受けたりしてしまう。

Ⅲ.<キーワード>

 同じ質問を何回も繰り返す。 不安になる。 一人でいられない。

Ⅳ.<事例概要>

年  齢 80歳代後半
性  別 女性
職  歴 家事手伝い
家族構成 夫と施設で暮らしていたが2年程前に夫死亡
認知機能 HDS-R0点
要介護状態区分 要介護3
認知症高齢者の日常生活自立度
既 往 歴 特にない
現   病 アルツハイマー型認知症
服 用 薬 アリセプト
コミュニケーション能力 会話は成立するが同じことを繰り返して聞く
性格・気質 温厚で負けず嫌い
A D L 歩行・排泄・入浴・食事は自立
障害老人自立度 A1
生きがい・趣味 歌を歌うこと(英語の歌も歌える)
生 活 歴 裕福な田舎町の家に生まれ、姉妹と共に可愛がられて育つ。汽車で1時間かけて隣の県の学校に通ったことを楽しげに話す。学校卒業後は姉が家業を継ぎ、Aさんは親の勧めにより結婚する。転勤の多い夫に従い県内をあちらこちら移動する。3人の子供にも恵まれた。子供達はそれぞれ結婚し独立するとともに、X市にて夫との二人暮らしとなる。夫が次第に視力障害と歩行力低下になりAさんは介護をするが、自身も認知症を発症し夫婦で施設に入居となる。しかし、Aさんの認知症は徐々に進行し施設での暮らしが困難となり、長男の住んでいる遠方の施設入居となる。認知症の症状はさらに進み、夫の状態も悪くなり在宅復帰は困難となる。最終的には慣れ親しんだX市にて施設を探したいとの家族の意向があり、AさんはX市グループホームへ入居となる。
人間関係 認知症の周辺症状により仲間外れになったり、他人からできないことを批判されてしまったりする。
本人の意向 早く家に帰りたい。子供や夫が心配(夫は2年程前に死亡)。
事例の発生場所 グループホーム
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