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事例概要 事例53

タイトル:途切れることのない要求への対応

Ⅰ.<事例の状況>

「自販機にジュースを今すぐ買いに行きたい。」職員が忙しくて、対応が難しい時間帯にほぼ毎日このような訴えがある。「前日も買って、まだ冷蔵庫の中に4 本あるので、今日買いに行くのは、我慢しませんか。」と提案すると「今日の夜中の分だから駄目。」、また「今、夕飯の準備で忙しい時間なので少し待ってもらえませんか。」と言うと「いいよ、一人で行ってくるから。」とシルバーカーを押しながら、内履きのまま出て行く。歩行に不安があるので、職員が付いて行こうとすると、「なんで付いてくるの、早く帰れ、付いてくるなら死んでやる。私は、こうと思ったら、たとえ間違っていても思ったとおりにしなきゃ気がすまない、意地なの。」と歩きながら、訴え続ける。
 最近、他の施設で暮らしていた夫が病気で亡くなる。葬儀のために自宅に戻ったが、息子とけんかをし、通夜を迎えることなく、夜中にホームへ息子の嫁に連れられ戻ってくる。それからは、息子からの連絡は一切なく、関わりは途絶えている。以来「息子を訴えるために裁判所に行きたい、警察に行きたい。」という訴えも加わる。

Ⅱ.<この事例で課題と感じている点>

 途切れることなく出される要求の背景にあるものを理解し、適切な対応をしたい。本人の行動や要求を押し留める状況が続くことに申し訳ないという思いがあり、試行錯誤しながら対応することにスタッフが疲れ始めている。

Ⅲ.<キーワード>

訴える者のストレスと応える側のストレス

Ⅳ.<事例概要>

年  齢 80歳代
性  別 女性
職  歴 会社員、家政婦、夫の自営業手伝い
家族構成 息子家族と同居をしていた
認知機能 不明
要介護状態区分 要介護2
認知症高齢者の日常生活自立度 Ⅲa
既 往 歴 高血圧症・高脂血症・眩暈症・不眠症
現   病 高血圧症・高脂血症・眩暈症・不眠症・アルツハイマー型認知症
服 用 薬 アダラートCR錠・ナトリックス錠・プラビックス錠・クレストール錠・アモバン錠・プルゼニド錠・オメプラール錠・ドラール錠・メリスロン錠デパス錠・ロキソニン錠・テルネリン錠
コミュニケーション能力 つじつまの合わない言葉遣いはあるが、日常会話には、全く問題ない。
性格・気質 面倒見が良い・プライドが高い・気性が激しく、自分を抑えることができにくい
A D L 歩行はシルバーカーを使用している。その他のADLは自立。
障害老人自立度 A2
生きがい・趣味 リーダーシップをとること・外出や買い物をすること
生 活 歴 学校を卒業後に地元の会社に数年間勤務する。その後数年間の家政婦を経て、20歳代後半に結婚。夫の仕事の都合で転居する。その後さらに転居し、20年間程夫の自営業を手伝う。2人の男の子に恵まれる。バブル崩壊と共に廃業し、飲食店を始めたいという息子と共にD市に新居を設け、移り住む。隠居生活となる。
人間関係 思いどおりにならなかったり、不愉快な思いをしたりすると入居者や職員の区別なく、その感情をあらわにするので良好な関係を保てない。息子との関係は途絶えている。
本人の意向 同居していた息子との折り合いが悪く、もう自分の帰るところはない。できれば、ここで長く暮らしたい。
事例の発生場所 認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
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