「事例を探す」

事例概要 事例52

タイトル:信頼関係をもう一度築くために

Ⅰ.<事例の状況>

転倒による脳挫傷と大腿部骨折のため、入院したが、精神的に不安定な状態があり予定より早くの退院となり、グループホームに戻った。3年程前の入居当時のような精神的に不安定な状態に逆戻りしており、そのうえ身体能力は自立歩行から車椅子になっていた。入院生活で、踵は褥瘡になった。また日中傾眠し、時折奇声(「殺されるー」など)を発するようになっていた。トイレの移乗や着替えの際は目をつぶったまま叫び、暴れ、職員に対して激しい攻撃的な行為が発生し、また混乱して自分の手を噛むことも多い。食事中も眠ってしまい、介助しても拒否がありあまり食べない。夜間も頻回に目を覚まし、奇声を上げ、立位困難だが自分でベッドから出て歩こうとすることが多い。

Ⅱ.<この事例で課題と感じている点>

グループホーム入居から3年程かけて築いてきた信頼関係とAさんの精神的安定が、入院を機に崩れてしまった。混乱しているAさんに対し、職員はどう関わったらよいのかと悩んでいる。

Ⅲ.<キーワード>

不安との闘い。 信頼関係。 家族との協働。

Ⅳ.<事例概要>

年  齢 80歳代後半
性  別 女性
職  歴 会社窓口業務。 夫の他界後は、賃貸業で現在も収入あり。
家族構成 グループホーム入居前は一人暮らし。 長女夫婦の面会は月1回程度。次女夫婦・長男夫婦(隣県在住)の面会はなし。
認知機能 MMSE 10 /30点
要介護状態区分 要介護4
認知症高齢者の日常生活自立度 Ⅲa → M
既 往 歴 アルツハイマー型認知症、脳梗塞
現   病 左急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、右大腿骨頸部骨折
服 用 薬 アリセプトD、グラマリール、酸化マグネシウム、ラキソベロン(頓服)、リスパダール
コミュニケーション能力 不安定であるが、精神的に安定しているときは会話も可能であり、質問に対しても内容は少しつじつまが合わないが流ちょうに答える。興奮時は、意味不明瞭な奇声を発しこちらからの問い掛けは一切通じず、目をつぶったまま暴れる。
性格・気質 昔から気性が激しく、自由奔放だったらしい。
A D L 食事は、普通食。 入院中は全介助・拒否あり。 入院前は自立・食欲旺盛。排泄は、入院中は尿・便共にオムツ内失禁。 入院前はトイレ使用し尿失禁のみ有り。
移動は、入院から車椅子全介助立ち上がり困難。 入院前は、不安定ながら見守りにて自立。着脱・入浴は、全介助だが拒否あり。
障害老人自立度 障害自立度A1→入院中C2→退院後B2
生きがい・趣味 以前はおしゃれと買い物
生 活 歴 自営業の家の五女として生まれ裕福な生活だった。公立の学校を卒業し、大手会社の窓口勤務となる。20歳前後で公務員と結婚し、2女を授かるが、まもなく夫は死亡。
その後再婚し、長男出産。再婚男性も亡くなった。
賃貸業を始め高収入で、旅行や多額の買い物をする自由な生活だった。子供との関わりはあまりなく、子供が自立してからは一人暮らしで、子供との関係も疎遠であった。
10年程前に脳梗塞になり入院。その後も一人暮らしを続けるが、近所からの苦情や電話でのやり取りで長女が異変を感じ、4年程前に当グループホームに相談に来る。3年程前にグループホーム入居。当初帰宅願望が強く、暴れたり叫んだりすることも多かったが、1年程かけて精神的安定を図った。夜間やトイレなど個室に入った際には「どうするどうする」と連呼したり、犬や猫の遠吠えを真似ることがあり、「大丈夫ですか?」と声を掛けると「どうかしたの?何かあった?」と平常での応答があった。それ以外は穏やかにグループホームでの生活を続けていた。
1年程前より脊椎湾曲により歩行が不安定になる。手すりがあれば自立歩行可能。夜間不眠と奇声が増えはじめ、夜間、居室で転倒し、硬膜下血腫で救急搬送し入院。
入院中は著しい精神不安定の状況となり、翌日退院となる。グループホームに戻ったが、再度、夜間に居室で転倒し、大腿部頸部骨折し入院。人工骨頭挿入し退院となる。
人間関係 入院前は、長女は2~3ヵ月に1回面会、次女は1年に1回面会、長男は面会なし。グループホームでは、他入居者は遠巻きに様子をうかがっている。
本人の意向 自由にさせて欲しい。
事例の発生場所 グループホーム
前のページへ戻る
ワークシートへ