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事例概要 事例12

タイトル:衣類へのこだわり~戻ってこない衣類、盗まれた上着の行方は?

Ⅰ.<事例の状況>

 Aさんは、「衣類が戻ってこない。」と言い険しい表情になり、たびたび施設内の洗濯室へ向かう。洗濯室からは随時返却しているため、Aさんの言う衣類は洗濯室には見当たらない。気分転換のため散歩などに誘っても、衣類に対しての思いはおさまらないため、Aさん自身に洗濯機で洗濯をしてもらうケアプランに変更し、自室に干すようになった。Aさんに洗濯してもらうようになってからも、「戻ってこない。」と言うが、自分でしていることを説明すると、「ああ、そうだった。ありがとう。」と言い落ち着いていた。最近になり再び、「物干し場へ見に行かせてくれ。」と険しい表情が見られるようになった。自分でしていることを説明しても、「前の物が返ってこない。」「また盗まれた。」などと言う。Aさんの中では盗んだ犯人を特定の利用者であると思っている様子で、直接本人には言わないが、職員へ度々訴えている。

Ⅱ.<この事例で課題と感じている点>

 その都度説明や対応を行っているが、興奮が強くなり訴えが続くことが多い。
今のところ、本人が疑いを持っている方を含め、他の利用者へ、「盗んだ。」と言うことはないが、今後興奮が強くなった時にAさんが、犯人だと思っている利用者へ直接言うのではないか。

Ⅲ.<キーワード>

 衣類へのこだわり。 思いこみによる感情変化。 特定の方を犯人扱いする。 洗濯することでの確認。

Ⅳ.<事例概要>

年  齢 90歳代前半
性  別 女性
職  歴 農業 家事 子育て
家族構成 一人暮らし
認知機能 HDS-R10点
要介護状態区分 要介護2
認知症高齢者の日常生活自立度
既 往 歴 高血圧 変形性腰椎症 骨粗鬆症
現   病 高血圧 変形性腰椎症 老年期認知症 脳梗塞
服 用 薬 コリネール・カマ・チアリール
コミュニケーション能力 物忘れあり、洗濯物・衣類についての内容はつじつまが合わないが、その場の会話については良好。
性格・気質 社交的、さっぱりした性格。
A D L 食事、排泄、移動は自立。入浴は見守り
障害老人自立度 A1
生きがい・趣味 手芸 縫い物 ゲートボール
生 活 歴 学校卒業後は農業に従事。結婚後は夫の仕事の都合で県外に住んでいたこともあるが、戦争で疎開し地元へ戻ってくる。子供達が自立してからは夫と二人暮らしになり、家事のかたわら畑作りやゲートボールをしていた。7年程前に夫が要介護状態となり介護をしてきたが、この頃より物忘れ等の症状がみられていた。その後夫が亡くなってからは一人暮らしになり、近所の方が連日様子を見に訪問していた。徐々に認知症の進行がみられ、鍋を焦がしたり店への支払いが不充分になり、近所から役場、民生委員へ連絡が入るようになる。一人暮らしが難しい状況になった頃、2年程前に脳梗塞を発症し、退院後介護老人保健施設への入所となる。入所してから認知症の進行がみられ、衣類の訴えや、自宅の所在地に関する混乱があり、実家と自宅の区別がつかなくなったりしている。
人間関係 町内のゲートボールに参加し近所との交流は良好。施設利用中は同室や同席の方々と会話をしている。
本人の意向 家が心配なので帰りたい。
事例の発生場所 介護老人保健施設
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