グループホーム入居当初のころは、不安定ながらも自力歩行できていた。しかし、徐々にふらつきや転倒、ベッドからのずり落ちなど下肢筋力の低下、バランスの不均衡が目立つようになる。歩行器の使用や夜間ポータブルトイレの使用を勧めるも、急な立ち上がりや歩き出し、方向転換、腰くだけがあるために、絶えず目が離せない状況になる。最近では、行動がせっかち、粗雑化が加速し、他人からの抑止が効かない状況である。食事は熱いものや量を多く口の中に入れむせる、割り箸で唇を突いて怪我をしても食べ続ける、入れ歯が気になり出し入れを繰り返し破損する、夜間ポータブルトイレの移乗を繰り返し、座り損なうなどの事故、ヒヤリハットすることが頻発している。ケアスタッフは、大事故につながらないように気が抜けない。Aさんは、そのことを察知してか精神状態が落ち着かないと、昼夜とも排尿回数が増え、トイレの行き来を繰り返している。
スタッフが予測していないことが突発的に起き、繰り返されるため、目が離せない。また、言動による危険回避が効かないので、環境整備やマンツーマン対応を行うも、Aさん、介護スタッフ共にストレスが溜まる状況にある。従って、大きな事故につながる可能性がある。
年齢・性別 | 90歳代前半・女性 |
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職 歴 | 専業主婦 |
家族構成 | 夫は1年前に死去(死去6ヵ月前 当ホームで一緒に過ごす) 子供は2男1女(別居) |
認知機能 | 入居時 HDS-R 11点 現在 HDS-R 8点 |
要介護状態区分 | 要介護3 |
障害老人自立度 | A1 |
認知症老人自立度 | Ⅱa |
ADLの状態 | ①食事の様子 一部介助 ②排泄の様子 一部介助 ③移動の様子 一部介助 ④着脱の様子 一部介助 ⑤入浴の様子 全介助 ⑥整容の様子 一部介助 |
認知症の診断名 | 老人性認知症 |
現病・既往歴 | 【現病】 脳梗塞後遺症・パーキンソン病・高血圧症 【既往歴】 脳梗塞・うつ病 |
服 用 薬 | メネシット・エクセラーゼ・ブロプレス・セルシン・アジャストコーワ |
コミュニケーション能力 | 一方的に固執したことを繰り返し話す。他者の言葉が聞き入れにくい。 |
性格・気質 | せっかち・負けず嫌い |
生きがい・趣味 | 読経・競い合うゲーム・カルタ・歌を口ずさむこと |
生 活 歴 | 本人とは対照的な、ゆっくりマイペースな夫と暮らす。戦争体験(外地からの引き揚げ)の話をする。 |
人間関係 | 他者との会話は少ないが、人が歌っていると一緒に口ずさむ。 週1回の息子たちの来訪は喜んでいる。 |
本人の意向 | 自分の意のままに過ごしたい。 「ここに泊めてもらえますか。」と毎晩言う。 |
事例の発生場所 | グループホーム |