昔から子供のために一生懸命働いていたので、現在もホームでの生活で働きたいと思っている。そのためか、スタッフから魚おろしや味付け、味見、盛り付けなど頼まれると良い表情で行う。ただスタッフが調理場に入ると本人も手持ちぶさたになり、手伝おうとするが本人の思いとスタッフの思いが一致せずスタッフに止められ思いどおりできずにいる。
食事の盛り付ける数や量を間違ってしまう、魚のおろす枚数を間違うなどが増え、スタッフからは「お願い」というよりも指示的な言葉や、本人がやろうとすることに対し「待って」という言葉が飛び交い本人のやりたいことができないという思いが自信をなくすきっかけにもなっている。
洗濯物に関しても、夕方だから本人は取りに行きたいがスタッフの都合で取りに行けなかったり、「あれは、ここのじゃない」と否定され本人の思いどおりにならなかったりすることで落ち込みが見られ、自信をなくしてしまっている。
やりたいことができないことで落ち込んでしまうことや、自信をなくしてしまっていること。
自信の回復
年 齢 | 80歳代半ば |
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性 別 | 女性 |
職 歴 | 学生のころから30歳代後半まで家の仕事(漁師)の手伝いや子育てを行い、30歳代後半から水産加工場に30年程勤務。60歳代後半からはホテルで調理場の手伝いとして働く。 |
家族構成 | 4男2女で、それぞれ独立している。 |
認知機能 | HDS-R 6点 |
要介護状態区分 | 要介護3 |
認知症高齢者の日常生活自立度 | Ⅱb |
既 往 歴 | 高血圧症 |
現 病 | 高血圧症・アルツハイマー型認知症 |
服 用 薬 | バルレール錠、エルシボンカプセル、シンベノン、酸化マグネシウム、フォルセニッド |
コミュニケーション能力 | 会話の疎通は成り立っているが、すぐに忘れてしまう。 昔話や子供たちの話になると一方的に話をしていることがある。 |
性格・気質 | 昔は負けず嫌いであったようだが、現在は穏やかで物静か。 文句などは言わず、黙っていることが多いため、特定の他者から「元気がない、挨拶しない」など誤解されることがある。 |
A D L | 生活全般に見守りが必要。歩行は安定。排泄は失禁時にパッドを取り替えるなどの一部介助が必要。入浴は洗髪・洗身に一部介助。更衣は自力で行うが、何枚も重ね着してしまうことがあるため見守り・声掛けが必要。 |
障害老人自立度 | A1 |
生きがい・趣味 | 昔から昆布干しやウニむきなどの浜仕事が得意。働くことが好きで今でも働いていたい・体を動かしていたいと思っている。畑仕事は好きで草むしりや芋掘りなど熱心に行う。 |
生 活 歴 | 島で生まれ、その後約80年間暮らす。10歳代後半に1回目の結婚、次男出生後に夫と死別。20歳代後半で再婚し4子(2男2女)を出産。夫の漁を助けながら子育てをする。夫は体が弱く水揚げもあまり良くなかったので、本人が加工場で一生懸命に働き、進学した子供たちに仕送りをしていた。60歳代後半からはホテルの調理場の手伝いとして働く。 5年程前、夫が肝硬変のため、入院。3男と同居し、夫の看病をする。その後、夫の死去後、島に戻り基本的には一人暮らしとなるが、近くに住む娘や親族がフォローしていた。 4年程前より、夫が生きているとの言動が始まる。夕方になると夫や子供が帰って来ないと近所を探し回るようになる。島ではデイサービスやショートステイを利用しながら、夏場は近所の漁業の手伝いをして過ごしていた。その後、娘の家→帰郷→息子の家→帰郷と、それぞれ約半年間ずつ住むようになる。 その後、3男の住む街へ転居しグループホームに入居。現在に至る。 |
人間関係 | 家族・友人とも良好。週に一度、3男が面会に来る。他にも時々子供たちや孫・ひ孫が面会に来る。 |
本人の意向 | 本人の言葉で「何でもいいから仕事をして、体を動かしているとサッパリする」 |
事例の発生場所 | グループホーム |