Aさんは、「家へ帰らなければ」と出口を探し、利用者Bさんの部屋に入ってしまう。Bさんが、「ここからは出られないのよ。」と話しても、Aさんは強引に部屋に入って行き、ベランダから出ようとする。あまりにも強引に「出て行く。」と言い張るので、Bさんが、「出来るならどうぞ。」と言うと、床頭台を動かし、雑誌やティッシュボックス、洋服などをベッド上に散乱させてしまう。
他の利用者の居室に入る前の、Aさんの思いに気が付きたい。
出口はどこかしら。
年 齢 | 90代前半 |
---|---|
性 別 | 女性 |
職 歴 | なし |
家族構成 | 夫は他界している |
認知機能 | HDS-R17(昨年度の調査) |
要介護状態区分 | 要介護度3 |
認知症高齢者の日常生活自立度 | Ⅲa |
既 往 歴 | 結核 白内障両眼手術 右膝変形性膝関節症内視鏡術 喘息 右手手根管症候群 軽い脳梗塞 |
現 病 | 陳旧性脳梗塞 気管支喘息 右膝変形性関節症 認知症 |
服 用 薬 | 抗血栓薬(パナルジン)・向精神薬(チアリール)・抗ヒスタミン薬(ポララミン)ホクナリンテープ頓用 |
コミュニケーション能力 | 「家へ帰らなければ」と自分の思いを訴えることができるが、夫が亡くなっていることは忘れている。学生の頃の事をよく話す。 |
性格・気質 | 親切で、おっとりした面を持つが、失礼だと感じたことには激しい怒りを見せる。 |
A D L | 食事は自立。排泄は、日中定時にトイレ誘導する。夜間はセンサーマットを使用し、ポータブルトイレの使用を介助。入浴・着脱は、重ね着をするので一部介助。 |
障害老人自立度 | A2 |
生きがい・趣味 | 歌を歌う。生け花をする。息子と自宅に帰る(週1回) |
生 活 歴 | 3人兄弟の長女として生まれる。20代前半で結婚する。子供は4人。娘は頻繁に面会に来る。施設の近くに住んでいる息子が週1回外出に連れ出している。 夫と二人暮らしで、市内のコーラスグループや老人会のグループに入り活動していた。80歳代頃より認知症が出始める。夫の入院後、認知症が進む。「夫の入院が理解できない」「外出し帰れなくなる」「衣類を突拍子もない格好で着る」「喘息の貼り薬を忘れる」「現金をしまい忘れる」「自分で電話をするのに、かかってくる電話には出ない」「衣類・寝具に失禁しても取り替えない」といった症状が出始め、息子たちが交代で泊まったり、通ったりして、介護に当たっていた。 介護者の疲労にて24時間ヘルパー導入。夫の死後、一人暮らしが難しいことと、経済的理由で施設に入所する。 |
人間関係 | 丁寧に接しないと、怒ってくることがある。 近くに住む息子は、毎週末自宅に連れ帰っている。天気のよい日や花の季節は、ドライブをして自宅に行く。食事の支度をしている間は、本人はウロウロしているという。夕食をゆっくり食べ、食後のコーヒーを飲み、20:00頃施設に帰ってくる。時々、髪を染める為に息子宅に行ったり、美容院に寄ったりしている。 |
本人の意向 | できるだけ、自宅に帰りたい。認知症の進行を穏やかなものにしたい。 |
事例の発生場所 | 特別養護老人ホーム |