Aさんは昔踊りをやっていたことから、特養利用者を見ると「かわいそうな方たちだ。何かやってあげたい。」という思いが強く、デイサービス利用時に特養利用者のために踊りを披露するということを生き甲斐としていた。状態が悪化し植物や物への執着心が強くなり、生け花や庭に咲いている花、掲示板に貼られている造花や本などを収集することが増えてきた。花を採ろうとし、庭やテラスに出て行き転倒することもあった。ほかにも、「おやつを持ち帰って一つの物を家族と分ける。」と言い張ることもたびたびあり、他者の食べ物(残り物)を食べることも見られるようになった。また、御詠歌に対するこだわりも強く、「仏具が欲しいから仏壇屋に連れていってほしい」「葬式があるから赤飯を200人分炊いてほしい」などの訴えも日に日に強くなってきた。Aさんが収集した物を預からせてほしいことを伝えたり、Aさんが思っていることに対し話をしようとしたりすると急に興奮し、時折手を上げることも見られるようになった。
元々収集癖があったが状態の悪化により、こだわりが強くなったことや感情の起伏が激しくなったことで、以前のようにコミュニケーション(意思疎通)がうまくいかない。どのようにかかわることで、うまくコミュニケーションがとれるようになるのか。また、リスクも高くなってきたため、安全に生活するにはどう対応したらよいのか。
収集癖がある。執着心やこだわりが強く、時折手を上げることにつながる。感情の起伏が激しい。
年 齢 | 80歳代半ば |
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性 別 | 男性 |
職 歴 | 会社勤務 転職し研究所に定年まで勤務 |
家族構成 | 妻と共に娘夫婦と同居 |
認知機能 | N式老年者用精神状態尺度 17点 |
要介護状態区分 | 要介護5 |
認知症高齢者の日常生活自立度 | Ⅲa |
既 往 歴 | 脳梗塞(左半身麻痺)、パーキンソン病、アルツハイマー型認知症 |
現 病 | パーキンソン病、アルツハイマー型認知症 |
服 用 薬 | 抗高脂血症薬、糖尿病用薬、消化性潰瘍用剤、抗不安薬、抗パーキンソン剤、催眠鎮静剤、下剤 |
コミュニケーション能力 | 難聴もあり発語もゆっくり。自身の思いを訴えることは可能だが、つじつまの合わないことが多い。他者の言っていることに対し、簡潔な言葉であれば理解可能。 |
性格・気質 | 思いやりがある。感情の起伏が激しい。こだわり・執着心・思い込みが強い。 |
A D L | 食事は自立(キザミ食、おかゆ、スプーン使用)。排泄は半介助(衣類の上げ下げ、清拭)。入浴は半介助(着替え、洗髪、洗身)。車椅子使用(自操可能)。 |
障害老人自立度 | B1 |
生きがい・趣味 | 奉仕活動。御詠歌。自慢話。 感謝状や賞状・写真を人に見せるのが好き。 |
生 活 歴 | 7人きょうだいの6番目として出生。会社に勤め、その後転職し、研究所に定年まで勤めていた。現在の家には2番目の夫として婿養子に入る。娘が1人おり、妻、娘夫婦、孫と同居。定年になるころより認知症の症状が出始め、うつのような状態となった。10年以上前に、パーキンソン病で入院。9年程前から認知症の症状が見られ始めた。会社や人の家の草をむしっては御礼や感謝状を請求したり、葬式の家を新聞で調べお経をあげに行ったりしていた。(留守でも勝手に入ってお経をあげ、長距離移動の際には走っている車を止め、知らない人に頼んで目的地まで行っていた)現在は在宅支援を継続して行い、ショートステイとデイサービスを併用している。 |
人間関係 | 元々奉仕活動を生きがいとしていたため、他者に自ら話し掛ける姿は見られる。きょうだい(姉、妹(特に姉を慕っていた))が同じ施設のサービスを利用しているため、きょうだいと話している際には穏やかな表情で共に過ごしている。思いどおりにならないと大声で怒鳴る(女性に対しては特に)。 |
本人の意向 | 何か他人のためになる活動を行いたい |
事例の発生場所 | デイサービス、ショートステイ |