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事例概要 事例29

タイトル:何も出来なくなってしまった自分自身を悲観し、心気症状や帰宅願望を訴えるAさん

Ⅰ.<事例の状況>

 Aさんは若い頃から自分で何でもやってきたという自負があり、人の世話になったり迷惑をかけることを極端に嫌う一面があった。ホームでも、「自分の食べた皿くらいは自分で片付けるよ。」と言いながら、みんなの分まできれいに洗ってくれている。それが自分の出来ることであり役割として自発的に行っている。しかし、遠慮や失敗を恐れるあまりつい、「○○さんの方が早いから。私は遅いし、みんなを待たせたら悪いから。」等の言葉を発し、それが次第にストレスとなり、他者に対する言動が荒くなってしまう。居室などでゆっくりと会話をすると、「もう家に帰りたいんだ。ここにいても何の役にも立てないから。情けないんだ。」と、心情を明かす。

Ⅱ.<この事例で課題と感じている点>

 何も出来なくなった自分自身のことを情けないと感じている。みんなに迷惑をかけるくらいなら、独りで暮らしていたほうがいいという悲愴感を常に訴える。病気に対する心気症状も出現し、うつ状態になり、ストレスやもどかしさをぶつける場所がないことが課題。本人の希望、出来ることやしたいことをどのような形で支援すればいいのか。

Ⅲ.<キーワード>

 迷惑がかかる。 とろくさくてごめんね。 家に帰りたい。

Ⅳ.<事例概要>

年  齢 70歳代後半
性  別 女性
職  歴 まかない婦 農業
家族構成 次女として生まれる。結婚し3人の子供をもうける。
認知機能 HDS-R7点
要介護状態区分 要介護2
認知症高齢者の日常生活自立度 IIb
既 往 歴 慢性心不全 慢性腎不全 胃潰瘍 めまい 右膝一部人工関節置換
現   病 慢性心不全 慢性腎不全 レビー小体型認知症
服 用 薬 アリセプトD錠・フロモックス錠・ミヤBM細粒・ラシックス錠・リシノプリル錠・チラーヂンS錠・アロシトール錠・バイアスピリン錠・ジゴシン錠・ベニジピン塩酸塩錠・メインテート錠・抑肝散エキス顆粒・ウルソ錠・ムコソルバンL・ユニフィルLA錠
コミュニケーション能力 聴力・視力問題なし。構音障害等なし。自分の要求も遠慮し、なかなか本心は言えないところがある。他の入居者との会話も可能であるが、スタッフが自分以外の利用者と関わりを持つことを極端に嫌がる。嫉妬妄想があるため、一度機嫌を損ねると、それ以降は内にこもってしまい、他者の話や言葉も受け付けなくなる。
性格・気質 頑固。 話し好き。 短気。
A D L 食事、排泄は自立。 洗身、洗髪は一部介助。 歩行は杖を使用し自立しているが、長距離歩行が困難なので外出時は車椅子使用にて介助が必要。
障害老人自立度 A2
生きがい・趣味 気の合う仲間との会話や趣味の農作業。昔なじみの知人との外出や家族との面会。金魚の餌やり。
生 活 歴 まかない婦や農家の仕事を長くしていた。子供たちが自立し、夫と2人で老後の生活を送っていたが、夫が30年程前に他界し一人暮らしになる。5年程前より金銭管理が出来なくなり、やがて徘徊も見られるようになってきた。徐々に症状の悪化が見られ、1年程後に精神科受診にてレビー小体型認知症の診断を受ける。現在アリセプトD、抑肝散顆粒等を服用している。
人間関係 自分の機嫌や体調がいいときには他の利用者との会話を楽しんでいるが、自分よりも弱者に対してきつくものを言うところがあり、スタッフの見ていないところでは孤立してしまうことがある。
本人の意向 もっと家族に会いたい。馴染みの友人と出かけたい。ここにいては何も出来ない。自分がみんなに迷惑をかけてしまうので、ホームに入居する前に住んでいた家に帰りたい。
事例の発生場所 グループホーム
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