空いた時間があると家に帰ることを思い出し、「かあちゃんが待っているから。」と言って施設内を歩き始める。しかし高齢のため下肢筋力が低下しており、バランスも崩しやすいため転倒の危険が高い。できるだけ手をつないだり近くで見守りをしたりしているが、自立心が強く「一人で帰れる」と思っているため、職員がそばについているとストレスを感じることもある。
職員はAさんの思いを尊重して関わりたいと思っているが、歩行状態が非常に不安定なためどうしても近くでの見守りは必要。しかしAさんとしては過剰に付き添われることはストレスとなる。また、他の入居者の介護やその他の業務と重なると、常に安全な範囲で見守ることは難しいという問題もある。
転倒。 家に帰りたい。 自立心。
年 齢 | 90歳代半ば |
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性 別 | 女性 |
職 歴 | 専業主婦 |
家族構成 | 一人暮らし |
認知機能 | HDS-R1点 |
要介護状態区分 | 要介護4 |
認知症高齢者の日常生活自立度 | Ⅲa |
既 往 歴 | 老人性認知症、うっ血性心不全、喘息 |
現 病 | 老人性認知症、うっ血性心不全、喘息 |
服 用 薬 | テオドール錠(気管支拡張) スペリア錠(去痰) 真武湯エキス顆粒(新陳代謝改善) カルフィーナ錠(ビタミンD補給) プレタール錠(血栓予防) |
コミュニケーション能力 | あいさつのような日常的な会話や、「立って下さい」「食べてください」などの基本的な動作については声かけで理解できる。それ以上の複雑な会話の場合は「わからない」と答えることが多い。 |
性格・気質 | 自立心が強く芯が強い。前向きで他人への思いやりもある。 |
A D L | 食事:見守り 排泄:一部介助 入浴:一部介助 着脱:一部介助 |
障害老人自立度 | A2 |
生きがい・趣味 | 母親に会うこと(母親は死亡している)。 子供のころの思い出話。 |
生 活 歴 | 生まれてから高齢になるまでずっと同じ町で育つ。学生時代は勉強も運動もとても楽しく幸せだった。しかし結婚後早くに夫を戦争で亡くし、子供を女手一つで育てたため大変苦労した。その際に自分の母親がとても力になってくれた。子供が独立してからは一人暮らし。自分のことは自分でやってきた。 80歳代半ばより物忘れが目立ち始め、介護保険のサービス利用を開始する。 |
人間関係 | 自分から積極的に話しかけることは少ないが、職員に笑顔で話しかけられると喜ぶ。Aさんが納得のいかない場合ははっきりと自分の意見を主張する。 |
本人の意向 | 母親が待っているから家に帰りたい(母親は死亡している) |
事例の発生場所 | 認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護) |