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事例概要 事例28

タイトル:頭部外傷性認知機能障害を持つAさん

Ⅰ.<事例の状況>

 Aさんは生活保護を受給しており、保護費の入金日には自分で郵便局に出かけ、全額下ろしてくる。毎月の入金後には外泊や外出の希望があり、弟やスタッフの送迎で母親宅に外泊し、馴染みの飲食店に出掛け飲酒している。飲酒後、自宅に帰れずに警察の保護でホームに戻って来たり、外泊中に外で転倒するなどの事故があった。以前生活していた公営住宅には、まだ荷物が置いてあり鍵を持っているため、公営住宅に泊まっていることもある(本人談)。母親は高齢で高血圧のため、「家に帰って来られても、何処に行ったか分からず、帰りも遅いので面倒見切れない。」と外泊を断ることもある。主治医は1日1杯程度の飲酒は認めており、スタッフと買い物に出かけカップ酒等を購入して晩酌しているが、主治医には「お酒は飲んでいない。」と言っている。

Ⅱ.<この事例で課題と感じている点>

 入金後にグループホームの入居費を本人に請求するが、買い物や飲酒を優先してしまい、支払いが滞ることがある。
 母親宅に帰れないときは、公営住宅に泊まろうとする。毎月の外出希望に家族が対応できない場合は、スタッフがどのような対応をすべきなのか。本人が自分の病気のことを理解し、ここでの生活を受け入れるためには、どのような支援をすれば良いのか。

Ⅲ.<キーワード>

 飲酒の要求がある。 公営住宅にまだ荷物が置いてある。 計画を立てた金銭の管理が出来ない。

Ⅳ.<事例概要>

年  齢 60歳代半ば
性  別 男性
職  歴 炭鉱夫 土木作業員 レストラン勤務
家族構成 多数の兄弟の次男として出生。 一人暮らし。 母は弟と同居している。
認知機能 HDS-R14点
要介護状態区分 要介護1
認知症高齢者の日常生活自立度 IIb
既 往 歴 脳挫傷 頚椎骨折 腰椎骨折 うつ病 大腸憩室炎 クラッシュ症候群 急性腎不全 急性アルコール中毒
現   病 頭部外傷性認知機能障害
服 用 薬 グラマリール細粒・ホリゾン散・マーズレンS顆粒・イサロン顆粒・サイレース錠・メチコバール錠
コミュニケーション能力 自分の思いを訴えることはでき、他の入居者との会話も可能。役所からの書類や手紙などの内容が理解できずに、自分なりに解釈することがあり、スタッフの説明を聞き入れないことがある。
性格・気質 面倒見が良い。 親分肌。 陽気。
A D L ほぼ自立。
障害老人自立度 J2
生きがい・趣味 買い物 飲酒 パチンコ
生 活 歴 各地で炭鉱夫・土木作業員などして稼働する。20歳代で結婚し子供をもうけたが、本人が交通事故に遭い、協議離婚。引き取った子供を施設に預け、各地で土木作業員や線路工として稼働していたが、交通事故の後遺症で入退院を繰り返すため稼働困難となり、生活保護を受給しながら単身生活を送る。3年程前から疼痛による不眠を主訴に精神科に通院していたが、1年程前より「自宅に若い人が入ってくる。」等の言動があったり、自室・身体の清潔の維持が困難となり、入居1カ月程前に入院、その後グループホーム入居となり、現在に至る。
人間関係 穏やかな性格で面倒見も良いので他の入居者との関係は良い。母親と同居している弟や、飲食店に勤めている妹が頼り。
本人の意向 お酒が飲みたい。公営住宅に帰って一人暮らしをしたい。(「『主治医が良いと言えば帰っても良い』と、生活保護の担当ケースワーカーが言っていた。」)
事例の発生場所 グループホーム
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