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事例概要 事例42

タイトル:障害者福祉施設で暮らすAさんの認知症ケア

Ⅰ.<事例の状況>

 3年程前から、物忘れ・廊下を歩き回る・昼夜逆転などが頻繁になった。当初は日中かなり動きが活発で、視力の弱いAさんを、常に見守りを行わなければならない状態であったが、1年程前から動きが減少し、移動は職員の歩行介助による誘導、食事も一部介助を必要とする状態となっている。

Ⅱ.<この事例で課題と感じている点>

 認知症が進行しているAさんに、今後の生活を充実したものにしてもらうために何が必要か。

Ⅲ.<キーワード>

 本人の気持ち(感情)に寄り添う。。

Ⅳ.<事例概要>

年  齢 80歳代前半
性  別 女性
職  歴 工場に勤務するが、短期間で辞職。その後、障害者福祉施設内で縫製作業を行う。
家族構成 4人兄弟。障害者福祉施設に入居するまでは、母親・兄夫婦・姉と同居していた。現在は別の障害者福祉施設で生活している。
認知機能 測定未実施
要介護状態区分 要介護認定は受けていないが、療育手帳区分:A1
認知症高齢者の日常生活自立度 判定を受けていないため、不明
既 往 歴 乳がん、白内障、網膜色素変性症
現   病 貧血、認知症(はっきりとした診断は受けていないが、CT撮影ではかなりの脳の萎縮が確認されている)
服 用 薬 アリセプト、フェロミア、カリクロモン、オパプロスモン、セロクエル、アモバン、アタラックス
コミュニケーション能力 生活に必要なある程度の会話をすることができるが、「口を開いて下さい。」という声掛けをしないと、口を閉じたままモゴモゴと話す。視力が弱いため、言葉でのコミュニケーションが中心である。
性格・気質 とても穏やか。のんびりしているため、他者から威圧的な態度を取られることがある。
A D L 食事はほぼ自身で取ることが可能だが、視力が弱いため食べ残しがあり、その際は職員が一部介助を行っている。また、食事の途中で手が止まる(恐らく食べていることを忘れてしまっている)ことがあるため、近くで職員が見守りを行っている。
障害老人自立度 判定を受けていないため、不明
生きがい・趣味 認知症症状が出る前は、裁縫・漢字の書き取り。現在は音楽鑑賞。
生 活 歴 4人兄弟の次女。乳児期に風邪をこじらせ肺炎を患う。生死をさまようほどの重体であり、その際に脳に障害を負ったとのこと。のんびりとして、穏やかな性格で皆に好かれていた。幼い頃から裁縫をしていたが、本人が好んでやっていたというよりも、母親が何か特技を、という意味で行わせていたようである。学校を卒業後、工場に勤務するが短期間で辞職。
障害者福祉施設に入居する。施設では、縫製や自動車部品のクリップの手曲げ作業などを行っていた。無口でおっとりしており、一人でボーッと過ごしていることが多かったため、「趣味を持たせる」という指導目標があり、裁縫・あやとり・縄跳び(近視があり目が悪くなるという理由で戸外での活動を勧めていた)などをしていたが、後々まで残ったのは裁縫であった。
行動は皆より遅れ気味で、自ら進んで行うよりも、他者に連れられて行動する。初めてのこと、未知のことに関しては、自主性はないが、習慣化されたものは進んで参加し、コツコツと地道に行うことができた。10年程度この施設に在籍し、その後現在の障害者福祉施設に入居する。入居から30年近く経った3年程前から認知症と思われる症状が現れ、現在では動きも減り職員の一部介助が必要な状態となっている。
人間関係 他県にいる姉が身元引受人となってから、年5回ほど親族数名で面会に訪れたり、外出したりしている。姉からはたびたび手紙や衣類などが届く。
施設内では、穏やかでのんびりしている性格のため、他者に世話をしてもらったり、時には威圧的な態度を取られたりすることがある。
本人の意向 のんびりと好きなことをして暮らしたい。
事例の発生場所 障害者福祉施設
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