「認知症の人とともに暮らす町づくり」地域活動推進キャンペーン

「認知症の人とともに暮らす町づくり」地域活動推進キャンペーン授賞式・地域活動報告会
~2004年10月15日(国立京都国際会館(京都市))~

「国際アルツハイマー病協会 第20回国際会議・京都・2004」ワークショップ(5)において授賞式および地域活動報告会が行われました。進行は永田久美子実行委員が担当しました。

司会の永田先生

開会の冒頭に、長谷川和夫実行委員長より今回のキャンペーンの趣旨説明が行われました。

1.開会挨拶:実行委員長 長谷川和夫

長谷川先生のご挨拶  我が国における認知症高齢者の生活を支援するための活動は、いま、大きな新しいステップを踏み出しています。「高齢者の尊厳をささえるケア」をキーワードとして、住みなれた地域を拠点としながら、認知症高齢者のための新しいケアモデルが日本全国で創られてきました。本キャンペーンでは各地域での先進的な試みを募集して顕彰・紹介し、日本全国に認知症の人本来の力を生かす町づくりを進めることをめざしています。
 昨年の10月から認知症高齢者ケアに携わる人々を対象として、地域実践活動の報告を求め、広く全国より59事例の報告が寄せられました。堀田力選考委員長をはじめとする選考委員会は奨励賞として4つの活動事例、特別賞(佳作)として4つの活動事例を選考し、このワークショップでは奨励賞授賞者への授賞式および受賞者からの地域活動報告を行います。また、スウェーデンのバルブロ・ベック=フリス氏の特別コメントもお願いしております。

2.表彰式
 各部門の奨励賞授賞団体に、各部門賞の冠団体の代表者より賞状および副賞が授与されました。

●表彰1.町ぐるみ実践部門 厚生労働大臣奨励賞
(受賞) 愛知県 師勝町
(授賞者) 厚生労働省 老健局痴呆対策推進室室長補佐 赤坂浩
愛知県師勝町の表彰
●表彰2.新しい住まい方部門 認知症介護研究・研修センター奨励賞
(受賞) 三重県 ウエルネスグループ
(授賞者) 認知症介護研究・研修東京センター長 長谷川和夫氏
ウエルネルグループの表彰
●表彰3.家族のユニークな活動部門 呆け老人をかかえる家族の会奨励賞
(受賞) 福岡県 大牟田市介護サービス事業者協議会、大牟田市痴呆ケア研究会
(授賞者) 呆け老人をかかえる家族の会代表理事 高見国生氏
大牟田市痴呆ケア研究会の表彰
●表彰4.権利擁護部門 住友生命保険相互会社奨励賞
(受賞) 滋賀県 特定非営利活動法人(NPO)しみんふくしの家八日市
(授賞者) 住友生命保険相互会社取締役社長 横山進一氏
しみんふくしの家八日市の表彰

3.各部門入賞者による発表
授賞式終了後、各部門選考主査からの紹介および各部門入賞者による活動内容の報告が行われました。

●発表1.町ぐるみ実践部門
○紹介者:部門審査主査 北海道 奈井江町長 北良治氏
北海道奈井江町長 北良治氏の授賞 <紹介>
 人はみなそれぞれの人生をお持ちです。年配の方々にとって、思い出をたどる回想の大切さを町の行政が重視し、地元に密着した質の高い回想法の実践を町ぐるみで継続的に取り組んでいることが挙げられます。また、普及率の普及策も行き届いており、効果がしっかりと検証されています。これらは、今後の発展性や他地域への広がりも期待できるものであると考えます。

●発表事例:「師勝町思い出ふれあい(回想法)事業」 愛知県 師勝町
○発表担当者:師勝町町役場福祉部総合福祉センター課介護支援係長 植手厚氏
植手厚氏の授賞 <抄録>師勝町会議発表原稿
 頭の奥の記憶を呼び起こすことより、脳を活性化させ、元気な自分自身を取り戻そうとする心理療法の回想法。師勝町では高齢者の介護予防・認知症防止を目的に地域ケアに取り入れて実施している。1セッション10名程度の高齢者が、回想法センターに通所し、回想法スクールに参加します。保健師等の指導の下、テーマに沿った思い出を皆で語り合うグループ回想法を行っている。スクールの前後には効果測定を行い、参加者への効果を検証している。さらに回想法による認知症高齢者の減少や医療・介護面への影響も評価していきたいと考えている。また、 回想法の普及啓発活動も推進しており、回想法キット(懐かしい生活用具を詰めた思い出箱)の貸し出しや、リーダー養成研修などを行っている。回送法を通じ、介護予防・認知症防止の目的が達成できるよう、職員・スタッフ一同が情熱をもって事業に取組んでいるところである。

●発表2.新しい住まい方部門
○紹介者:部門審査主査 NHK解説委員 小宮英美氏
小宮英美氏の授賞 <紹介>
 認知症の方を支えるというと、つい深刻な顔をして眉間にしわをよせてしまったりすることがあるのですが、そうではなく、楽しく取り組んでいるという点が審査委員の中で文句なしに良いと挙がった声でした。ここでの取り組みでは、認知症の方が得意なことをして自信を持ってもらうこと、そしてその姿を子どもたちや周りの人が見て尊敬の念を持つこと、子どもたちがお年寄りの姿を思いやりながら暮らしている姿は、ノーマライゼーションそのものと感心致しました。地域の子育て支援に貢献して町の中の価値ある存在として、ホームも認知症の人も位置づけられていることが素晴らしいと思います。宅老所の役割、学童保育の役割それぞれの専門性を持ちながらも、 無理なく交流している点がいいなと思いました。高齢者が一方的に介護を受ける存在になっているのではなくて、その力が子どもに対しても発揮されていて、認知症の人と子どもたちが自然に関わりながら、食べたり、学んだり、遊んだり、新しい生活交流の場作りを通して、認知症の人が次代を担う子どもたちをしつけるすぐれた存在であることを実証していると思います。

●発表事例:「次世代の育成するグループホーム・宅幼老所」 三重県 ウエルネスグループ
○発表担当者:社会福祉法人自立共生会理事長
         (医)創健会ウエルネスファミリーサポート施設長 多湖光宗氏
多湖光宗氏の授賞 <抄録>三重県ウエルネスグループ発表原稿
 核家族化等で、子育てに経験豊富な老人の知恵が親・子どもに伝わらなくなり家庭の養育力が低下してきている。我々は、学童保育や託児を併設するグループホームと宅幼老所を開設し、認知症老人力を子育てに生かすことに取り組んでいる。
 おやつ・食事・学習・遊びなどの「生活交流」を続けると、老人と子ども達がお互いに名前を呼ぶような「なじみの関係」になる。新しく子ども達との交流が始まる場合は、職員によるきっかけ作りと3ヶ月以上の生活交流が必要だった。「ケアの受け手」であった高齢者や子ども達が「ケアの与え手」にもなることで、「ケアの相互性と相乗効果」が生まれる。 認知症老人は、子どもを指導したり世話をすることで自信を回復し、子ども達は、お年寄りのプライドを傷つけないように接する術を自ら学び成長する。本気で叱り、心から褒める痴呆高齢者は、見て見ぬ振りをする大人や教師よりも、子ども達の「しつけ」ができる優秀な教育者だ。

●発表3.家族のユニークな活動部門
○紹介者:部門審査主査 認知症介護研究・研修仙台センター長 長嶋紀一氏
長嶋紀一氏の授賞 <紹介>
 「痴ほうであっても安心して暮らせるまちづくり」を目指して、啓発絵本の作成の過程を通して、多くの方々の関わりの中から認知症高齢者のイメージが活き活きと形成される活動は、審査にあたりましたものは感動を与えました。さらに、啓発絵本を題材にした学習活動を通して、「認知症になることを受け容れる」「正しく理解すること」が身内に 困難であると考えられてきたのですが、それを乗り越えいくために、家族の一員である子どもに焦点をあてアプローチしたユニークな活動であると思います。これらは、忍耐力を要する活動であると思いますが、今後の発展性が期待できると思います。認知症を持った方々を子どもの目を通し、認知症介護に関わる方々の目を通し、活き活きと絵にするだけでなく、活用したことが素晴らしいと思います。

●発表事例:「痴呆の人の理解のための子どもたちの絵本作り」
        福岡県 大牟田市介護サービス事業者協議会、大牟田市痴呆ケア研究会
○発表担当者:社会福祉法人東翔会グループホームふぁみりえホーム長 大谷るみ子氏
大谷るみ子氏の授賞 <抄録>大牟田市痴呆ケア研究会発表原稿
 これは大牟田市痴呆ケア研究会が、平成15年度地域痴呆ケアコミュニティ推進事業の一環として企画・作成した、子供たち、子供たちと語り合う大人、介護の担い手である家族や専門職、そして地域のすべての人々に贈る「痴ほうの人からの思いやり」のメッセージであり「痴ほうであっても安心して暮らせるまちづくり」のための啓発絵本です。
 同会の運営委員が、グループホームの入居者やその家族、子供たちや地域の協力を得て、3話の絵本(1章)と解説(2・3章)という形で作成しました。認知症という病気や認知症の人の人生や底力、子や孫を思う気持ちなどに触れながら、認知症介護の困難さ、家族や地域の絆、共生の心、そして尊厳ということを描いています。表紙は高校生が描いた大好きなおじいちゃんの横顔です。認知症の人の心情や願い、やさしさが伝わってきます。この絵本を使って市内の小中学校での 授業や地域認知症ケア教室を開催しながら「まちづくり」に欠かせない「大切なもの」を伝えていきたいと思います。
 市内の高取小学校、延命中学校での授業では、絵本を読み、みんなでグループワークを行いました。「痴ほう」の話は難しいかなと思っていましたが、子供たちの発言や感想文を通して子供たちの純粋な目や心に触れることができ、私たちの活動意義をあらためて感じました。感想文の一つを紹介します。「とてもかわいそうに思えた。痴ほう症の人も回りの家族も。忘れたり、忘れられたりするのは涙が出るほど悲しくなる。痴ほう症になってもいつまでも家族の一員、大切にしたい」 こんな子供たちの力を借りながら、地域で痴ほうの人が理解され、支え会うことのできるまちづくりに取り組んで行きたいと思います。

●発表4.権利擁護部
○紹介者:弁護士 中山二基子氏
中山二基子氏の授賞 <紹介>
 高齢者の方のグループホームがそれだけで完結するのではなく、子育て支援を含めた交流の場となっていて、そしてそのような活動が、高齢者が住み慣れたところで普通に暮らすことができるような権利を育み、守っていることが高く評価されました。
権利擁護いいますと、大上段でとても難しいことのように聞こえるのですが、本当の意味の権利擁護というのはこういう普通の暮らしをする中で、高齢者の方の気持ちにそっと添うようなサポートをしていくことであろうと常々思っております。この活動は、市民の方自身が高齢者の生活と権利を守る重要な担い手となっており、さらに、そこから素晴らしい自発的な活動が次々と発展していっていることが伺えます。高齢者をサポートする貴重な事例であり、いろいろなところに広がってほしいと考えました。

●発表事例:「しみんふくしの家八日市グループホーム」
        滋賀県 特定非営利活動法人(NPO)しみんふくしの家八日市
○発表担当者:理事長 小梶猛氏
小梶猛氏の授賞 <抄録>しみんふくしの家八日市発表原稿
 定員8名のグループホームで保育、学童保育、子育て支援等を実施し、幼児デイ、児童デイ、母親と乳児のデイと位置付けている。
 デイサービスの実施で、グループホームと地域の多様な人たちとの交流が日常の生活の中で普通に持てるようになった。
 多様な環境の人たちが、認知症の高齢者の生活に接し、共通の体験をすることで、認知症高齢者の生活や居場所に正しい理解を示す。
 また、企業や団体のボランティア等を受入れ、活動を通して新しい視野で地域へ働きかけることもできた。
 成果として、市民を対象とした認知症理解の研修会、ワークショップを持ち、それを切掛けに、民生児童委員、行政そしてNPOが協力し共に市内の200ケ所近い町内会での認知症理解と地域福祉の取り組みの研修会開催となった。
 認知症高齢者の生活支援事業に、多様な事業を併設し、地域との関わりが深くなり、地域福祉という視点での街づくりに発展する動きとなっている。

4.総評:選考委員長 堀田力
 
堀田力氏の総評 「人はいくつになってもどんな状態になっても人らしく自分の思いを活かし、自分の役割を持って生きていきたいと願っている」ということを4つの発表を聞いて改めてしみじみと感じました。師勝町の試みは回想の中で尊厳や生きがいを取り戻し、仲間と一緒にやっていこうという素晴らしい着想だと思います。自立共生会と「しみんふくしの家八日市」に致しましても、人らしく生きるために、いろいろな人と交わり、自分の役割を持つことで人間らしさがよみがえってくるということが示されていたと思います。痴呆ケア研究会は子どもたちの感じたことを受け止めて、絵本にすることで、その人らしく生きてほしいと願う心を育てているところが素晴らしいと思います。このキャンペーンが1つの契機となり、このように尊厳を持って最後まで生きようとする人たちの想いを活かし、そして助け合っていきていこうというみんなの想いを活かした支え合いの様々な取り組みが全国に広がっていくことを心から願っております。
 私たちは誰でも年をとります。「ぼけたらどうなるのだろう」と不安を抱えながら日々を送るのではなく、「ぼけても必ず皆が支えてくれる。最後まで自分らしく生きていける」と確信できる社会にしたいと願い一緒にやっていきたいと思います。

5.講演:バルブロ・ベック=フリス
「何故、認知症高齢者に共同生活介護か?」
 
ベック先生の講演  スウェーデンにおける認知症介護は、1950年代からは、大規模精神病院や高齢者施設の入院患者、入所者の問題でした。しかし、1970年代になると、後期高齢者数が増え認知症高齢者への介護も増大しました。当時、従来の施設における介護では、認知症は病気ではなく、だれも関心はないが対応しなければならない極めて不快な老化現象の一種とみなされ、介護の仕事への満足感や動機付けも少なかったのです。
 今日私たちは、アルツハイマー病は、進行性の難病であることを知っています。これは、病理上の変化とそれに伴う細胞破壊や脳組織の萎縮を引きおこす脳の病気であると言えます。
 1985年、私は6人の重症認知症患者のために「バルツァーガルテン」という名のグループホームを作りました。これは、全ての方が精神病院、介護施設、自宅から転入する前に慎重な検査、評価を受けた点で、また全員がアルツハイマー型あるいは(および)血管性認知症の器質性認知症を患っていた点で極めて新しい試みでした。
 グループホームでは、入居される方の活動的であった時代の家具や調度品を調達し、古き良き時代のものをそろえることで、その時の記憶を呼び戻すことに取り組みました。前向きな環境は入居者も職員も心地よいものでなくてはなりません。また、ケアの理念「良好な症状管理、褒めること、あたたかさ、感謝、笑いなど」つまりQOLを提供するためにどうしていったら良いのかという研修を職員に対して実施しました。さらに、ご家族の経験を多くお話し頂き、家族への支援も同時に行いました。認知症の症状を緩和するために、薬剤療法も行いますが、これらはチームで行われなければならないと認識しています。 
 グループホームにおいては、QOL(生活の質)を提供するというということが基本にあります。残存能力をどれだけ引き出せる(刺激し、活性化させる)か、というのも大切ですし、個別に合わせた継続的なケアの提供も大切です。バルツァーガルテンでは、このようなケアのもと、投薬も少なくなり、独立心が保持されるなどの効果が見られました。
 
 認知症に関しては世界中で、多くの学問領域にわたる集中的な研究が展開されています。グループ生活介護(6人~8人)によって、難しい症状への対応、家族の過重負担への十分な理解とともに、相互のよりよい意思疎通や人間関係を築き、ケアの状況を和らげるためのチームワークを高めることが可能となります。
 また、優れた介護には次の条件が不可欠であると言えます。
(1)意義のある活動の提供
(2)症状に適応した継続的治療
(3)行動上の様々な障害への適切な対応
(4)質の高いスタッフ
(5)ケアについての明確な理念
 最後になりましたが、重要な点として、すべての認知症の方は、アルツハイマー型認知症か血管性認知症か、それとも両者であるか、適切な診断、検査、評価が行われなければなりません。こうした状況のもとで、グループ生活介護は 認知症介護における医療面と生活面との間に横たわる重大な溝を埋めていくことができ、また認知症の方、家族と職員双方に選択の道を与えていると言えると思います。


TOP
キャンペーンの開催趣旨
●キャンペーン
奨励賞・特別賞決定
▲町ぐるみ実践部門
▲新しい住まい方部門
▲家族のユニークな活動部門
▲権利擁護部門
▲特別賞
▲選考経過
▲選考委員一覧
●バルブロ・ベック=フリス教授講演「痴呆性高齢者の緩和ケア」
●「痴呆の人とともに暮らす町づくり」地域活動推進キャンペーン授賞式・地域活動報告会
実施要領
▲目的
▲主催
▲実行委員会
▲実施内容
■問合せ先
キャンペーン事務局
電話/FAX:03-3334-3073
RVA2A029@dcnet.gr.jp





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