DC博士のワン・ポイント

認知症治療薬について

アセチルコリンを増やす薬

 脳内のアセチルコリンは、目覚めさせる(覚醒)作用や活力を上げる(賦活)作用を持ち、重要な神経伝達物質(神経細胞の突起先端部のシナプス部で放出されて、次の神経細胞に情報を届ける重要な役目を持つ物質)です。このアセチルコリンを作る細胞がアルツハイマー型認知症の脳で減っています。作る方の神経細胞は増やせませんので、シナプスでのアセチルコリン分解消失を抑えることでアセチルコリン減少を補う薬剤が、アルツハイマー型認知症治療薬として我が国で最初に開発されました。それがドネペジル(商品名アリセプト)です。その後、同様な働きを持つガランタミン(商品名レミニール)やリバスチグミン(商品名イクセロンやリバスタッチ、貼り薬)が開発され、現在はこの3剤が日本で使われています。レビー小体型認知症でもアセチルコリンの減少があり、アリセプトはレビー小体型認知症でも認可されています。

 これらの薬は、どちらかというと「元気系」です。ごく一部の方ですが、活発になりすぎたり、頻繁に怒るようになったり、介護者が困る症状が出てくることがあります。これは効き過ぎ症状ともいえるので、効き過ぎの場合は薬を減量~中止することで、介護者が困る症状は改善します。
 この3剤の副作用は、第一に胃腸障害です。アセチルコリンによって胃液(胃酸)がたくさん分泌され、嘔気・嘔吐・食欲低下などを引き起こします。また、腸の動きが良くなりますので、下痢も副作用です(便秘が良くなるという恩恵もありますが)。

認知症介護研究・研修東京センター
センター長 粟田 主一